ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

雑誌が消える!(4)

 週刊アスキーの前に、月刊アスキーがあった。これは、パーソナルコンピュータの世界では、クオリティマガジンといっていい代物だった。もちろんお高く留まってるわけじゃなく、相応に色物ページもあったのだが、そういうところに感じられるのも「ウィットとエスプリ」で、けっして「お笑い」じゃない。

 「パソコンといえばBASIC!」だった時代に生まれたそれは、その時代時代において、ある種のスタンダードであり続けたんじゃないかと思う。クオリティマガジンと言っても、別に学術誌じゃない。ホビー記事もあれば、周辺機器の特集もある。だけど、其の扱いががっついていなかった。「これはビジネスに役立つッ!」みたいなことは、決して言わない。ゲームの作り方とか、パソコンの組み方とか、時代ごとに話題を独占するトピックスというのはあるのだけど、あえてそれに距離を置き、一歩高いところから現象を分析するみたいな感じがあったのだ。ぼく自身は、まだパソコンを手にするはるか前から読んでいた。そういうのに耐えられる内容だったってこともある。「『一太郎』の使い方を徹底解説!」なんて記事じゃ、持ってないやつは買うわけがない。

 一方で、情報は広く、嗅覚も鋭い。次の時代に流行るものを、的確に見つけて紹介していた。スタンダードというのは、この意味だ。月刊アスキーで特集しているものをきちんと追いかけていければ、コンピュータ界において時代遅れになる心配はなかったのだ。

 だけど、こちらははるか前に消滅している。

 他の雑誌に取って代わられたわけじゃない。パソコンのマガジンにクオリティを求める人が減ってしまったのだ。絶対数というよりは、多分比率なんだろう。それでも存在が許されなくなってしまうのが、資本主義社会の怖いところだ。今、本屋に並んでいるのは「Windows100%」誌のような、アングラ色の強いものばかり。

  「DVDをタダでコピーできる!」

  「コミックもトラックも無料DLし放題!」

 この種の煽り文句を見るたびに、ぼくは悲しい気持ちになってしまうのだ。