ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ビット仕掛けの木鐸

せんとくんの時もそうだった(1)

「流行は醜悪だ。だから、新しくなる」 なんて言葉を残したのは、バーナード・ショウだったか。「デザイン性を追求」をしていくと、だいたい気持ち悪くなる。市民から出てくるそんな本音を封殺する言葉として、供給する側はいつもこんな殺し文句を用意してき…

「語る」を語ろう、戦争(終)

新しいメディアというのは、タブーへの突破口になる。実際のところ、ぼくたち創作者がぶちあたる壁は、文化とか風習とかいった、目に見えない壁じゃない。はっきり言えば、人だ。編集者やプロデューサーがOKをくれないから、小説やドラマとして世に出ること…

「語る」を語ろう、戦争(4)

明治時代、立身出世をめざす少年たちの間で「綴り方」が流行ったのだという。今で言う「作文」だけど、ずいぶん様相が違う。というのも、文体ばかりか題材や描き方までも決まった内容から選択しなければならなかったからだ。「余、友人と梅花を見んと欲し、…

「語る」を語ろう、戦争(3)

母の戦争体験のクライマックス部分にあるのが、風船爆弾だった。 これは、気球に爆弾を着けてジェット気流にのせてアメリカ本土を爆撃するという、かなり苦し紛れの作戦だ。軍部も途中で嫌気が差したのか、正式な開発から手を引いていたのだが、熱心な技術士…

「語る」を語ろう、戦争(2)

戦争体験を直接聞く機会というのは、まあ今の子どもたちには難しいだろう。でもぼくが小学生だった頃というのは、戦争が終わってからまだそんなに経ってたわけではない。ファミコン登場から今現在までの年数よりも、それは短いのだ。というわけで、今では大…

「語る」を語ろう、戦争(1)

岩波ホールで「戦争レクイエム」という企画上映を行っている。黒木和雄監督の戦争を扱った映画4本を、連続して上映するというもの。キーワードは「日常の中の戦争」。描かれているのは戦場ではなく市民生活の方だという。 こういうテーマの設定は嫌いじゃな…

雑誌が消える!(終)

今回は、一週間にわたって断続的に書いてきたのだけど、そろそろ終わりにしよう。 週刊アスキーは、公式には「電子媒体への移行」ということになっている。この種の言葉は、まあ「廃刊」を「休刊」と言い換えてたのと同じような婉曲表現として使われがちなの…

雑誌が消える!(5)

実際のところ、本屋には膨大って言ってもいい種類の雑誌が並んでるわけで、その消滅を危ぶんでいるぼくの主張は、虚しく聞こえるかもしれない。 これには、ちょっと補足が必要だ。 事実、専門誌というのは、決して消えそうなわけじゃない。だけど一方で、そ…

雑誌が消える!(4)

週刊アスキーの前に、月刊アスキーがあった。これは、パーソナルコンピュータの世界では、クオリティマガジンといっていい代物だった。もちろんお高く留まってるわけじゃなく、相応に色物ページもあったのだが、そういうところに感じられるのも「ウィットと…

雑誌が消える!(3)

「LEON」、「Pen」、「MONOQLO」、「ターザン」、「ワイアード」、あと「エアライン」と「航空旅行」……今のぼくが読んでいる(定期購読はしてないけど、まあ結構よく買っている)雑誌を挙げると、こんなところになる。最後の2つはホビー誌だから、その時々…

雑誌が消える!(2)

なんで雑誌じゃなきゃだめなのか。今の時代なら、比較対象はインターネットってことになるだろう。となると答えは簡単。情報の、量とゆらぎだ。 先述の「初歩のラジオ」。タイトルで断ってあるぐらいで、まあそう難しい内容とは言えないものの、ほんとうの初…

雑誌が消える!(1)

クイーンの90年頃の名曲に「Radio Ga Ga」がある。 そこで歌いあげられてるのは、こんな内容だ。……ラジオ、それは少年時代の友人だった。世界大戦や映画スターそして火星人の襲撃まで、いろいろなものを教えてくれた。それがどうだい、今ときちゃ……(これ以…

シッポは既に導火線(終)

あれこれ書いた雑文も4日目だ。実際には1日でまとめて書いているのだけど、けっこう時間を使っている点には違いはない。 こんな文章書いてる時点で余裕みたいに見えるかもしれない。まあ、ぼくがゼミの指導教員だとして、受験控えた学生がそんなことしてたら…

シッポは既に導火線(3)

ぼくが司法試験を受けたのは、考えてみたら、まだ昭和だった頃だ。 当時の中大生はよく「記念受験」をした。法科大学院への入学が前提になる今とは違い、誰でも受けられる一発試験だったのだ。ぼくのもそんなものといえなくもないけど、ちょっと違う点がある…

シッポは既に導火線(2)

法学生だった頃はあまり資格試験とかに熱心ではなかった(そもそも政治学科だったしね)。一応それっぽいものは、おとなになってから一つだけ取った。その名も「ビジネス実務法務検定」、商工会議所の主催で大々的にやってるから、格付け的には日商簿記2級…

シッポは既に導火線(1)

バイクに乗っていると「若い命を粗末にするな!」なんて標語をよく見かける。反戦派は「若者の命が無残に散らされるのです!」って言葉で、戦争の悲惨さを語る。若者の命、客観的にはとても値打ちが高い。でも主観的にはっていうと、やっぱり軽いわけだ。人…

ぼくが弁理士をめざす理由(終)

受験にまつわる苦労話も、合格してしまえば「いい思い出」だ。そして体験記の結びには「諦めずに受け続けろ」なんて書いてある。そりゃそうだよね。受け続けなかったら、受かるわけなんてない。でも、それは宝くじの高額当選者だって同じだと思うのだ。たま…

ぼくが弁理士をめざす理由(9)

著作権を中心に、クリエイターの守護者を任じる弁理士。どう活動するのかは、あれこれと構想している。ただ、一つ大きな問題がある。弁理士試験というのが「主に特許法」の試験だということだ。 これはぼくにとって大きな障壁だ。先述のように、著作権法はほ…

ぼくが弁理士をめざす理由(8)

ぼくにとって著作権との関わりはかなり古い。言葉を初めて知ったのは、年齢まだ一桁の子供だった頃だ。学校から押し付けられていた計算ドリルの片隅に書かれていた、こんな一文からだった。 「このドリルを無断で複製することは、著作権法違反になります」 …

ぼくが弁理士をめざす理由(7)

そんなわけで、問題の多い現在の制度、これが健全に解決されなければならず、そのためには意思決定中枢にゲームクリエイター畑の出身者が入り込んでいないといけない。これが、大きな視点でぼくが感じているプロブレムだ。 だけど、自分自身の問題として捉え…

ぼくが弁理士をめざす理由(6)

ソフトウェアの世界は、特にそういう言葉が使われる前から、グローバル化が進んでいた。創成期にはユニークな会社が多かったゲーム業界も、産業として確立することでどんどんグローバル化していった。その結果、アメリカ企業の悪いところまで、しっかり採り…

ぼくが弁理士をめざす理由(5)

法律は、専門家集団が作る。 官僚が原案をまとめ、政治家が議会で議決することで決まるから、この二者だけしか見えていない低レベルな論者も少なくないけど、決定プロセスの実体部分を担っているのは、専門家集団……具体的には、学者、実務家、官僚だ。彼らは…

ぼくが弁理士をめざす理由(4)

想定外の連中が想定外の権利を行使する……実際に、どんなことが起きているのか。これは、ゲームに則した話がわかりやすいだろう。 任天堂は『ティアリングサーガ』のゲームデザイナーを「著作権侵害」で訴えた。自社のゲーム『ファイヤーエムブレム』の盗作だ…

ぼくが弁理士をめざす理由(3)

そもそも、強い権利が、なぜ認められているのか。これは、立場の弱い個人が前提になっていたからだ。近代法の原理は「法の下では平等」で、作家だろうが出版社だろうが、対等の契約主体となる。とはいえ、現実の力の差はあきらかで、これを放置していたので…

ぼくが弁理士をめざす理由(2)

著作権法の何がヤバいのか。あえて詩的な表現をとれば「怪物化しつつある」ということだ。パテントトロールなんて言葉がある。パテント=特許で、特許権をネタにえげつない商売をしている連中への呼び名だ。だけど著作権の場合は、事情が違う。著作権という…

ぼくが弁理士をめざす理由(1)

弁理士試験合格を目指している。去年(2014年)が初挑戦で、今年が2度めだ。 多くの人にとっては、この試験が何なのかあたりから、解説が必要だろう。弁理士というのは、知財(知的財産権)に関する専門職。特許庁への出願を代行したり、取得した権利の管理…

選挙に向けて思うこと(終)

終わりにしようなんて書いてから、さらにぐずぐず書き続けた結果、投票日翌日になってしまった。この文章は、実際には少し前に書いているので、まだ結果は出ていない。ただ、以外な結末が待っていないことは、すでにわかっている。 ところで、こんな話がある…

選挙に向けて思うこと(9)

愚行権という言葉を知っているだろうか。 憲法学の分野で、ごくたまに使われる言葉だ。こんなのウィキペディアにだって載ってない……なんて思ったら、ちゃんと項目になっていた。ただし、ぼくが論じようとしていることとはずいぶん違う。 憲法学的な意味での…

選挙に向けて思うこと(8)

気づいたら、選挙戦も終盤になってしまった。政治について書き連ねていたけど、こちらもそろそろ終わりにしよう。 最後に書く政策的な主張は、議員報酬と政治資金の話だ。 ぼくは思う。国会議員の報酬は少なすぎる。少なくとも、上場企業の役員程度の水準に…

選挙に向けて思うこと(7)

議員報酬という点でも、ぼくは主張したいことがある。 職業でやる以上、報酬をもらう必要がある。国会議員の場合、年額1,800万ほどなんだということを、池上さんの記事で読んだ。上場企業の役員報酬の平均が、2000万円台だとか。仕事の希少さ&なりづらさと…