ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ゲーム学の夜明け

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(終)

間を空けながら書いているうちに、気づいたら4月も後半になってしまった。 いよいよ今年度のゲームデザインの授業が始まる。十数年の教員(&講師)生活の中、ただの一度も欠かさなかったのが、これだ。そして、少し遅れて、有志のみを対象にした企画ゼミも…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(9)

簡易なゲーム開発環境そのものは、昔からある。独立したばかりの頃のぼくがはまったのがそういうソフトの一つ、DIRECTORだった。より一般的には遅れて登場したFLASHの方だろう。インターネット環境での動作が前提となる分使いづらい面はあったが、何しろ安価…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(8)

さて、以上のべてきた「ゲームデザイナー論」は、一つの前提の上に成り立っている。「ゲーム会社で仕事をする」ということだ。 ファミコンの登場からほんの2・3年前に至るまで、ゲームデザイナーになるためにはゲーム会社で仕事しなければならないというのは…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(7)

一方、スケジュール管理は、もっと「勉強して理解しておくこと」の比率が多いとも言える。 まず工程が把握できていないと絶対にできない。ガントチャートは、ジョブを小分けにして項目化するところから始まるわけで、作業の全体が理解できていなければ書ける…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(6)

というわけで、読み書き、聞き話す、そういうスキル。そして、ガントチャートを描くということ。さしあたりはこういうことができないといけないわけだ。 とはいえ、以上は第一階層にすぎない。「……を実現するためには何が必要か」の問いという形で、すぐ裏の…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(5)

話を戻そう。ゲームデザイナーの仕事を、提案者と管理者という2つのモードで考える。これが、ぼくのやり方だ。そしてこのように理解することで、志望者が身に付けるべきスキルも、明確に定めていくことができる。 提案者は、何よりも話せなければならない。…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(4)

ここで1つ確認しておこう。デザインは、プロセスだと言うことだ。 少なからぬ人が勘違いをしているのだが、デザインというのは「卓越した個人による芸術的な創作活動」ではない。もちろんそういう要素はあるのだけど、あくまでも要素にすぎない。本質は、プ…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(3)

この仕事に求められる要素は何か。 ぼくは2つの立場で説いている。提案者、そして管理者だ。 ゲームデザイナーは、ゲームを構想する。つまりは「面白い」を考えると言うことだ。沈黙したままで考えていても仕方がない。人に話さなくちゃいけない。だから考案…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(2)

ゲームデザインとは、ゲームのデザインのことを言う。 デザイン=設計。このことは、知っておいたほうがいい。ためしに英語の辞書でdesignを引いてみると、①で書いてある意味はこれだ。 ただ、小説を書くという行為がパソコンのキーボードを打つことだけで成…

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(1)

ゲームデザインを教えて何年か、もう数えるのもめんどくさいことになってしまった。 ただ、同業者=ゲームデザインを担当しているティーチャーの中では、かなりの古参であることは確かだ。初めて学生の前に立った時、扱ってたプラットフォームはスーパーファ…

直球勝負、ゲームデザイン!(終)

では、どのくらいの水準に達していたらOKなのかというと、これは一概には言えない。そもそも企画職の募集数なんて、「ゼロ〜若干名」だ。同時期に会社を訪れた志望者の中のトップ級でないと入れないと考えたほうがいいだろう。そしてどのぐらいがトップにな…

直球勝負、ゲームデザイン!(12)

気づいたら、タイトル横の数字が桁上りしていた。「毎日更新」だった以前と違って、使った回数の把握がちょっとやりづらい。なるべく10回程度を上限にしようと思っているので、そろそろいったん区切りをつけたい。 ここまでの話を、ざっと要約しておこう。 …

直球勝負、ゲームデザイン!(11)

ゲームを知らないことには、ゲーム屋志望としては話にならないという話だったが、ゲームだけ知っていればいいというものではない。 作品としてのゲームには、文芸・美術から映像・音楽に至るまでの全要素が含まれている。だから、知っておくべきことというも…

直球勝負、ゲームデザイン!(10)

ゲームには、芸術、工学、商品という3つの面がある。ゲームデザイナーは、このそれぞれについて、積極的に知っていなければいけない。 工学というのは、さしあたっては「仕組み」になるだろう。ソフトウェアや3DCGについて、それがどのように動いているのか…

直球勝負、ゲームデザイン!(9)

昭和期のサラリーマンの間に伝えられていた、こんな言葉がある。 「全部優先!」 体はひとつしかなく、持ち時間は24時間しかない。だから仕事というのは優先順位をつけてこなしていくしかない。じゃあ、どれを選ぶべきか。ここで出てくるボスからの言葉が、…

直球勝負、ゲームデザイン!(8)

ここでもうひとつ、言えることがある。ゲームデザイナーの作品は、ゲームだということだ。 ゲームデザイナーが作る文書として、企画書というのがある。でもこれは作品のために作られる資料であって、作品ではない。企画書そのものが美しい必要はない。それに…

直球勝負、ゲームデザイン!(7)

業界には、ゲームデザイナー不要論者がちょくちょくいる。前、ゲーム屋が集まる掲示板で「ゲームデザイナーとは何する人か」をめぐる議論があって、そこでプログラマによるこんな書き込みをみたことがある。 「デザイナーなんて、オレの理解でいうと、 スケ…

直球勝負、ゲームデザイン!(6)

もう一方の管理者、これはどのようなものか。 伝統的に、企画職のいちばん主要な役割は「開発庶務」だ。ソフトウェア開発にはいろいろな雑用が発生する。電話とる、文書や書類を整える、スケジュール切る、会社全体の会議に出る、マスコミに対応する……こうい…

直球勝負、ゲームデザイン!(5)

提案者とは、何か。 ゲームデザイナーは、新しい遊びを作る。ただ、ひとりで作るわけじゃないから、他人に提案しなければならない。まずは自分のボスで、次にプロデューサーなどの決定権を持つ人に対して。企画が通ればスタッフに向かって提案する必要がある…

直球勝負、ゲームデザイン!(4)

デザインという言葉はバズワードで、好きな内容を盛り込める単語になってしまっている。一般的傾向としては「実作業に先立って行う、手よりも頭をつかう仕事」ってことが言えるだろう。 今はどうか知らないけど、「絵もプログラムもできないから(しなくてい…

直球勝負、ゲームデザイン!(3)

さて、元のテーマ「ゲームデザイナーにはどうやったらなれるのか」に戻ろう。 これは、実はとても簡単に言い表すことができる。クリエイターの世界というのは、そもそもそんなに複雑じゃない。分野を問わず、ある原理に基づいて動いている。 「作れる人には…

直球勝負、ゲームデザイン!(2)

本気で論じ出す前に、ゲームデザインという言葉の意味について確認しておきたい。 実際、いろいろな人がいろいろな形でそれを定義している。ぼく自身だって、最初の授業で論じるのがこれだ。ここは、アカデミック系の分野でたぶんいちばん被引用率が高い、サ…

直球勝負、ゲームデザイン!

『攻殻機動隊』が25周年なんだそうで、気がついたらぼくのゲーム屋歴もそれに近い水準になっていた。 生まれてはじめてゲームの企画書を書いたのは、まだファミコンも登場していなかった80年台前半のこと。その後あれこれあって、20代の終わりにゲーム会社に…