ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(8)

 さて、以上のべてきた「ゲームデザイナー論」は、一つの前提の上に成り立っている。「ゲーム会社で仕事をする」ということだ。
 ファミコンの登場からほんの2・3年前に至るまで、ゲームデザイナーになるためにはゲーム会社で仕事しなければならないというのは、特に論を待つまでもないほどの常識だった。
 そもそも企画屋というのは、かなり図々しい存在なのだ。
「オレ、こういうゲーム創りたいんで、カネ出してください。1億円くらい」
 赤の他人にこういうことお願いするのが、プレゼンなわけですよ。
 こう考えると、新人が仕事をする上では、「インハウスのデザイナー」という立場は不可欠であるといえる。実績もない無名な自称クリエイターの“おねだり”なんて、誰も聞きはしない。だが、社員に仕事としてやらせるのなら、話は別だ。彼の夢を叶えてあげたいんじゃない。誰かが「提案の最初」をしなければならないからで、そのために雇っているのが企画職の社員だからだ。
 というわけで、未経験の素人がゲームデザイナーになるためには、「ゲーム会社に企画職として就職する」が、唯一の現実的な選択肢だったのだ。
 これが、今は違ってきている。
 今、ゲーム開発は格段にやりやすくなっている。Unityに代表される優秀なツールの登場によって、 また、市場もオープンになっている。任天堂をはじめとするゲーム機のプラットフォーマーは実績ある法人としかサードパーティライセンス契約を結ばなかったし、最低ロット数が数千本あたりに設定されていたから、かなりの資本力がないとリリースできなかった。今ではどうか。アップルにしろAndroidにしろ、とてもオープンなビジネスモデルを採用している。
 つまり、自分で考えたゲームを自分で作り、自分自身で市場に出すなんてことが、できてしまうようになっているのだ。こうなれば、ゲーム会社になんか入らなくたって、だいじょうぶ。そして、自分一人で作る分には、提案も管理もいらない。