ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

学会に行こう

 このブログを開設した3月10日は、ちょうどデジタルゲーム学会の全国大会の日になっている。場所は函館。公立はこだて未来大学が会場だ。
 学会自体への参加は疎遠になってしまっているが、全国大会だけは欠かさず参加してた。今回もなんとかしたかったが、自分のクラスの卒業式を休むわけにはいかない。で、せめて懇親会だけ参加して直帰するとかできないかと、あれこれルートを考えた。札幌経由とか、いったん羽田に行ってから名古屋に戻るとか。でさんざん調べた結果わかったことは、日本は案外広いということだった。そしてもうひとつ。飛行機は全国各地を結んでるけど、結ぶ一端は基本的に東京で、全国各地どうしを密に結んでいるわけではないのだ。
 愚痴ってもしょうがないので、次のイベントをあたってみることにする。それが機会になって、学会への活動を復活できればそれはそれで面白いし。
 さて、なぜそんなにまでして参加したいのか。この時にしか会えない知人がいっぱいいる。加えてもうひとつ。設立大会以来の会員だった関係で、なんと1桁という、まるで最高幹部みたいな会員番号を持っている。シングルゼッケンならではのノーブレス・オブリージュみたいなものを感じているのだ。



 このデジタルゲーム学会だけど、話題に乗せるとよくこんなことを聞き返される。
  「それって何するとこなんですか?」
 直球で答えるのは簡単だ。学会の主機能は「発表の場の提供」にある。全国大会や研究集会を主催し、学会誌を発行するということで、デジタルゲーム学会もこの点は同じ。会員になれば、大会/集会で研究成果を口頭発表することができ、また学会誌に自分の論文を投稿することができる(査読があるから、掲載されるとは限らない)。
 けど、それでは相手の疑問を解決したことにはならない。というのも、たいていこの質問には、無言の前提が含まれているからだ。それまで補ってやると、たぶんこんなところだろう。
  「学会って言ったら、科学者が発表をするところなんですよね。
   ゲームみたいな現場仕事に、なんでそんなものがあるんですか?」
 実は学会にはもうひとつの大きな機能がある。親睦会だ。職場単位で作るかわりに、それを研究テーマを単位に作られているわけだ。ただ、重要なのは、それが科学/学問の流儀にもとづいて行われているということ。
 ゲームづくりは現場仕事だ。これはいかんともしがたい事実。だけど、だからといって職人的な経験則に立脚していたのでは、進歩はない。ゲームデザインだって「たぶんこれって面白いよね」を乗り越えなければいけないと思うのだ。
 だから、デジタルゲーム会ではなくデジタルゲーム学会。ゲーム職人の存在は否定しないけど、ゲームデザイナーにとってそれは成分のひとつで、同時にゲーム学者であったりゲームアーティストであったりという成分も不可欠だと思うのだ。