ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

Kindleの話(3)

 実はKindleは、初めて持った電子ブックリーダーではない。元々はソニー派だったのだ。Kindleに先立つ1年前、ソニーReaderを買った時から、ぼくの「元年」は始まっている。その時点でKindleペーパーホワイトもコボもあって、じっくり吟味した末の選択だった。その後、大量のPDFを用意、またReaderストアからの購入も少なからず行った。だが、ぼくはソニーとともに「2年」を迎えることはできなかった。

 理由は何かというと、Kindleのすごさの裏返しになる。環境面が、ブーストダウンしてしまったのだ。

 ソニーリーダーは、端末を選ぶ。Readerストアで買った本は、特定の一端末からしか読むことができない。iPad版のアプリが出て「やった!」と思ったが、なんとこれは別途ダウンロード購入したデータを読むためだけという、あきれた代物だった。クラウド上に保管という概念もなく、パソコンでダウンロードした後は、ローカルの環境でアップデートしていかないといけない。そしてお世辞にもシームレスと呼べるようなものではなく、その都度手間ひまかけて同期してやる必要がある。

 こういう欠点は使い始めてみるまではわからない。端末のスペック自体にはアドバンテージがあった。具体的には、ページめくりその他が物理ボタンであること、そしてmicroSDスロットが付いていることだ。だが、肝心のシステムが使いづらいのでは、こんなことはなんにもならない。

 こんなものを出していたのでは、続くはずもないだろう。すでに北米では撤退を決めたという。日本版のサービスが停止されるのも、時間の問題だといえるだろう。あるいはそれ以前に「ソニー」そのものが、歴史上の存在になってしまうのかもしれない。