ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

リスク回避としての持ち家主義

 家を買わない、これがぼくにとっていちばんのリスクヘッジだった。

 家というのは、とにかく高い。何十年ものローンを組んで買うしかないが、これが人生の選択肢を大きく減らしてしまう。月収の下限が決まってしまうから、好きな職業が選べないのである。ある程度給料のいい会社にするしかないが、そういうところは得てして仕事がきつい。また、辞めても同じ収入を得るのは難しいから、どんなにひどい目にあっても、歯を食いしばって耐えるしかない(人事もそのへんのことがよく解ってるから、家を買った社員に対してはいきなり強気になる)。

 そして失業でもした日には目も当てられない。家を買うとき、同時に生命保険に入らされるだけど、「ああ、オレさえここから飛び降りれば、家族に家だけは残してやれる」なんてもので、自殺を唆しているとしか言い様がないよね。

 家を買うというのはこんなとんでもないリスクを背負い込むということ。「月々の払いほとんど同じなんですから、お値打ちなんですよ」なんて言ってくるけど、むしろ逆で、借家住まいと割り切れば、同じ払いでこれだけのリスク回避ができるのだ。

 もう少し建設的な意味もある。

 ぼくは24歳で社会人になってから今の勤務先に来るまでの間、概ね5年ごとに給料の支払元を変えてきた。身分的には、公務員、会社員、自営業と一通りこなしてきたことになる。この間、実に豊富な経験値を稼ぐことができて、人生にとって大きなプラスになっている。だけど、もし公務員時代に家を買っていたら、今でもきっと同じ役所に務めているだろう。これはものすごい機会損失だ。

 そんなわけで、いわば「攻め」の姿勢において賃貸生活を続けてきたのだ。だけど、ここに来て、家を買おうかなと思っている。結論だけを見るとコペルニクス的なパラダイムシフトだけど、ぼく自身としてはポリシー的には一貫している。これこそが現時点でのリスクヘッジだということだ。そしてもう一つ、「経験値」という意味でも、以前同様の収穫感を感じてもいるのだ。