ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

クレジットカードクロニクル(2)

 社会人3年目というクレジットヒストリーの始まりは、決して早い方ではない。ただ「類したもの」なら、もっと前からだ。「赤いカード」といえば、バブル世代の人なら、みんなニヤリとくるだろう。

 これは『丸井』が出していた割賦払いのカード。

 時はバブル前夜、この国が空前のデザイナーズブランドブームに沸き立っていた頃。素人目にもそれとわかるユニークなデザインをした服は“DC”と呼ばれ、テレビや雑誌そして街のあちこちにあふれていた。

 ぼくの中には、ミーハーなぼくがいて、時々顔を出してきては、ぼく全体を乗っ取る。いろいろ迷惑もしてるけど、こいつがいるから人生が楽しいのも事実だ。そのとき学生だったぼくは、DCにはまってしまった。

 ここで問題になるのが、お金。現金があればなんの悩みもないし、伊勢丹だろうが三越だろうがあるいは直営の路面店も含めて、どこでだって買える。そうでないぼくのような人間の前に現れたのが、赤いカードだった。他店ではいっさい使えないけど、丸井の中に入っている店でなら、クレジットカードと同じようにサイン一つでいくらでも(いや、もちろん限度額はあったはずだけど、そこまで届いたことはない)買い物ができた。あの赤は、金はないけどブランド服が欲しいなんて思ってるプチ貧学生の願いを叶えてくれる、サンタクロースの色でもあったのだ。

 まあサンタクロースといってもちゃんとお金はとる(当たり前だね)。でも、ふつうの金融業者に比べれば優しいもので、支払いがちょくちょく遅れても、カードを取り上げられるようなことはない。その結果、買いすぎて引き落とせなかったり、あるいは引き落とされると生活費がなくなるから先手をうって預金を引き出したりして、引き落とせませんでした通知も何度も貰ったし、一度なんか特別の督促状まで受け取ったことがある(ふつうの通知はコンピュータ打ち出しだけど、督促状だと宛名がいかつい筆書きになるんだよ。知ってた?)。それでもお金持って店まで直接払い込みにいけば、すぐにまたカードを使わせてくれるからありがたい。

 まあとにかく勉強させてもらったわけだね。


 実際には社会人になってからも赤いカードは使っていた。ある意味丸井は「なじみの店」だから他に行くということがなかったのだ。だから、セゾンカードで本物クレジットカードデビューを果たすことになったのは、別に丸井からパルコに乗り換えたわけではない。パソコン通信の課金のためだった。

 そしてこのことは、クレジットカードというものへの目を開かせてくれたのだ。

 当時契約していたニフティは、従量課金制(1分10円青天井というかなりタフなプライスだ)。始めてから何ヶ月か、ノリの良かった頃は1万円に迫る課金を受けていたけど、あれこれあって飽きてきてからは俄然少なくなり、やがてメールチェックをそそくさと済ませるだけでログアウトするという使い方になっていった。結果、月の使用額が何十円というレベルにまで下がってしまった。

 その状態で、気がついたのだ。セゾンカードが、お金をとっていないということに。

 赤いカードでの経験から、手数料とか利子とかは当然とられているものだと思っていたのだ。だけど、何十円の課金に対してセゾンカードから請求されたのはその何十円だけ。郵送料だってかかっているだろうに、何も上乗せされていない。

 なんで? この疑問から、クレジットカードというシステムそのものへの関心がはじまったのである。