ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

クレジットカードクロニクル(8)

 ネットをさがしてみると山ほど出てくるカードがらみのページ。まあ、サイトそのものはアフィリエイト収入が目当てなんだろうけど、需要のないところには供給だってないわけで、そういう情報自体に値打ちがありそうなことは、なんとなくわかる。

 そうしたページでの重要関心事が、インビテーションだ。プラチナカードやブラックカードなど、ゴールド以上の格付けを持ったカードは、通常は自分で申し込むことはできない。カード会社が定めた基準に達した場合に、先方から招待されることになる。どうやったらこれを受けることができるのかというのが、一大テーマになっているのだ。

 シリーズの一回目にも書いたけど、今年のはじめ、ダイナースからプラチナカード(正しくは『ダイナースクラブ・プレミアムカード』)へのインビテーションを受けている。それまでの使用歴は1年+α。作って以来かなり使っていたので(家族での海外旅行もこれで支払ったし、ポール・スミスのスーツやコートも買ったしね)まあいつか来るだろうと思っていたし、そろそろかもとも思っていた。最初から応じる気はなかったし、実際応じもしなかったけど、来てみるとちょっと嬉しい。

 このインビテーションもまた、一連のイノベーションの一環だ。

 ゴールドカードというアイデアは、カード会社としては大きな収入源でもあり、当然ライバルから模倣されることになる。それに対する対策が、プラチナカードの創設だった。招待されたユーザーだけが作ることができるというシステムで別格のステイタス感(“逆いばら姫効果”とでも名づけたいよね!)を創出したわけだ。

 さらなる模倣に対して打った手が、「存在自体が非公開」というセンチュリオンカードだ。これはブラックカードと通称され「戦車も買える、限度額無制限のカード」なんて都市伝説まで生まれるほどの存在感を示した。ちなみに会費は36万円以上もする。会費の時点で、かつてのぼくの年間支払額を余裕で超えるぐらいだ。

 まあそんなわけで、今回もバックヤード的な話が中心になったけど、それでもぼくはゴールドカードを持つことをおすすめする。理由は、それが有料だから。

 この時代、無料のサービスばかりが増えてきた。ただこうなると、消費者としての自覚を忘れてしまう。かつてセゾンカード一本だった頃のぼくがそうだったように、損得勘定の基本を気にしないまま、漫然と使ってしまうことになる。これでは、資産というものについての健全な視点を、身につけられないということになってしまう。

 ダイナースは、装飾品としては気に入っている。券面のデザインが美しいし、何よりこのブランドのポジションがいい。アメックスゴールドのような押しの強さがない。知的で控えめでそれでいて実力派。クルマでたとえるならアウディだ(アメックスはベンツだろうね)。ただ、実用性には結構難があって、使えない店に会う確率が日本国内でも他より高く、海外ではもっと頼りなかった(タイでは、空港の免税店を含めて、使えた店皆無。いやもちろんぼくの経験だけですけどね)。

 あれこれ悩んだけど、たぶん今の契約期間で終わりにするだろう。実はJCBのゴールドも持っている。家族カードは無料だし、旅行保険も自動付帯な上に家族分までカバーしてくれる。タイでも免税店ではちゃんと使えた。実用品としてはこれで十分で、もうぼくにとってのクレジットカードは、実用品としての側面の方が大きいのだ。