ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

F1まとめ書き(6)

 前には「情報ソースは雑誌だけ」なんて書いたけど、実はもう一つあった。プラモデルだ。F1のプラモデルというのは、箱車に比べると断然精密度が高く、細かなメカニズムまできっちり再現されていた。これを組んでいくと、自然とメカの仕組みも解るようなものだったのだ。

 タミヤの人が書いたのを読んだことがあるけど、実際当時はおおらかだったそうで、特に許諾だのライセンス料だのなんて話もなく、チームオーナーのその場の快諾で商品化が決まり、取材のための撮影もやり放題だったそうだ。だからこその精密さなんだろう。さすがに金型を作る手間があるから、常に最新型が並ぶというわけには行かない。ただその分、レース年度の枠を超え、いろいろな年式のマシンが同時に並ぶことになる。

 そして、ここでの人気は、レース実績とは別の尺度で決まる。

 模型映えするマシンというのはある。中高生的にはマシンの性能なんてよくわからないけど、かっこいいものが嬉しいのは言うまでもない。この意味で、マクラーレンはいまいち。逆に大人気だったのがティレルの6輪車だった。そしてもう一つ、ブラバムBT46があった。

 平面形も三角なら断面も三角という、まるで帝国軍戦艦のようなシンプルかつ力強い楔型造形を見せるシャシー。迫力満点のアルファロメオ製水平対向12気筒エンジン。そしてラジエターを廃止、ボディ表面だけで冷却を行うという先進のメカニズム。このマシン、実際にサーキットの上で走らせてみるとそもそも冷却できず、シーズンイン前にお蔵入りという企画倒れの見本のような代物だったが、とにかく模型としてはとても魅力的だった(“素人はこれだから”なんて嗤うことなかれ。ニキ・ラウダですら、このマシンに惹かれてブラバムに移籍してしまったくらいだ)。

 まあ、レースでの勝敗だけではなく、さまざまな競い合いがあったということだ。