ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

持ち家プロローグ

 引っ越しを進めてみて、気付いたこと。それは、この作業がフラクタルだということだ。

 全体にも複雑さがある。いちおうその辺を理解し終えて細部を見始めると、そこにも同じレベルの複雑さがあることに驚かされる。そしてさらに細部には…こんな状態がずっと続いていく。これが、フラクタルという概念でくくられる現象だ。例えば伊豆半島なんて、地図で見れば入り組んだ海岸線だが、岬ひとつに注目すれば、それほどでもない。ところが実際に拡大してみると、岬そのものが伊豆全体と同じほど複雑。どんどん解像度を高めていけば砂粒レベルにまでこれは及ぶ。かくして、伊豆の海岸線は無限の長さを持つことになる。

 引っ越しが決まってから、相見積もりをして業者を決めるまでは早かった。そして決まった翌日、業者が大量のダンボールを持ってきた。ここからが、驚きの連続だった。つめ込み作業を始め、ある程度終わる。そして頭を上げて周りを見渡すと、ほとんどどれほども片付いていない。こんなことの繰り返し。

 どこかを開ければ、新しい何かが出てくる。そしてその中には、さらに細かな箱が。片付けるべき対象は、いつまでも現れ続ける。自分が想像していた以上に、自分の家というのは、複雑な代物だったのだ。