ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

堂々と説くゲームデザイン(6)

 ゲームデザイナーという言葉の多面性は、それがプロの世界で積極的に使われてこなかったことにも由来しているのだろう。

 日本ではながらく「企画」という職種名が用いられてきた。あるいはこれをカタカナ語化して「プランナー」なんて言ったりもした。そもそもゲームデザイナー自身が名乗りたがらないし、会社全体としても同様だ。結局言葉を使うのは、マスコミとかファンとか、業界の辺縁にいる人ばかり。彼らが自身の思惑でいろいろな意味を乗せてくるから、ほんとうの意味がぼやけてしまう。

 忌避された理由はいろいろあるが、一応次のようなものだ。

○紛らわしい

   同じ会社の中にいるグラフィック担当、

   彼らも求人票の上では「デザイナー」と呼ばれる立場なので紛らわしい。

○他職種の者が嫌がる

   特にプログラマが抵抗する。

   まるで自分たちが下働きのように見えてしまうからなんだとさ。

○いやみったらしい

   これは当のゲームデザイナー自身のこだわり。

   職種名の響きにいやみったらしさを感じてしまい、

   顔が痒くなってくるのだ。

 そうはいうものの、これにも意義はある。ゲームデザイナーの仕事には、提案者としての側面と、管理者としての側面とがある。だが「デザイナー」の語からは、後者の役割がイメージしづらい。プリプロダクション部分をもっぱら担当しているように思えてしまうし、さらにその中の限定された役割―ゲーム性やコンセプトを考えたり、ワールド/キャラクターなどの設定を構築したりなど―にしか、目を向けようとしない志望者も少なくない。

 実際、現場のゲームデザイナーのいちばん重要な役割は「開発庶務」になる。開発チームの仕事から発生する雑用全般を一手に引き受けるということだ。そこにはスケジュール管理もあり、他部署との折衝もあり、電話の取り次ぎとかプレス対応とか、クリエイターにとって「めんどくさい」と目される仕事の一切が回ってくる。現実問題として、こういうことに対応できないことには、仕事にならないだろう。

 とはいえ、この側面を強調しすぎることには、やはり問題がある。やはりデザイナーはデザインしてなんぼなのだ。〈ゲームデザイナー;職種〉は、〈ゲームデザイナー;役割〉を否定するための概念ではない。両者は止揚したところに、真に必要とされるゲームデザイナー像があるはずだ。