ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

堂々と説くゲームデザイン(9)

 タイトル横の数字も、ついに(9)まで来てしまった。元々さらっとまとめるつもりだったのに、次々と書きたいことが出てきて、収集がつかなくなりそうだ。考えてみたら、自分の人生と直結するテーマで、そんなに簡単に終われるはずがない。長く書き続けてきたが、ここでいったん区切ることにする。

 で、どうしてもこの流れで強調しておかなければならないことを、一つ書かせてもらおう。一部の専門学校が名乗る間違った「ゲームデザイン学科」のことだ。

 工学院にはないけど、いくつかの専門学校に「ゲームデザイン学科」なるものがある。

 ここまで論じてきたとおり、ゲームデザインとは、ゲームの設計のことをいう。概念設計の部分から始まるから、他産業でいう設計よりはだんぜん広い概念になるし、担い手もあまり技術者っぽくはない(技術に関する知識は「素人よりはマシ」程度でOKだ)。だが、ゲーム開発における重要プロセスであり、担い手であるゲームデザイナーも、他職種にはない固有の領域を担当する、専門職種だ。

 にもかかわらず、グラフィックスの専門職を指向するコースに“ゲームデザイン学科”という名前を与えている学校が、いくつも存在する。

 これは、好意的に見ても「勘違い」だろう。あるいは「無知」ということか。その名を与えた人たちは、ゲーム産業には40年の歴史があり、試行錯誤の中で様々な概念を作り上げてきたということに、気づいていないのだ。ゲームデザインという言葉を、マーケッターがプロジェクトのたびにでっち上げる耳に心地よいカタカナ語と同程度のものとしか認識できていないのだ。

 ぼくのような人間が個人として見解を述べているわけではない。グローバルなゲーム産業において、これはもう確立された概念だ。試しにGDCゲームデベロッパーズカンファレンス;年に一度アメリカで開かれる、世界のゲーム開発者が集まる大規模な国際会議)のサイトを覗いてみてほしい。8つのメジャーテーマの一つにGameDesignがあるけど、そこで何が論じられているのかを確認していみるといいだろう。ちなみにグラフィックスについては、Visual Artsというメジャーテーマがある。

 悪意的に見れば、「だまし」だ。聞こえのいい言葉を使ってお客(高校生)に買わせて(入学させて)しまおうという、まさにマーケッター的な発想。だけどここまで言い切るほどの材料(証拠?)を持ち合わせているわけではないので、この点は可能性の指摘だけにとどめておく。

 とはいえそれが「恥」であることには気づいてほしいものだ。専門学校というのは言うまでもなくプロを送り出すための学校なのに、プロたち=産業界の作り上げてきた概念を無視している。つまり業界なんて全くリスペクトしていないことを堂々と宣言しているようなものだからだ。


 嫌な話題で終わってしまったけど、まあ重要なことは中身にある。

 ゲームデザイナー志望者は誇りを持って欲しい。ぼくたちは何でも屋ではない。現実にはやれることなら何でもやるけど、れっきとした専門職だ。「ゲームデザイナー」なんて名刺の肩書としては恥ずかしいかもしれないけど、ぼくたちゲーム屋の仕事というのは、否応なしにグローバル化してきているわけで、これは仕方のないことなのだ。