ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

自転車でも走ってる(3)

 自転車は、豊富な経験値を与えてくれる乗り物だ。

 例えば、川の土手。川そのものは鳥たちにとっての生活の場で、それを眺めながら走るなんて、ちょっとしたサファリだ。そして、鳥は飛ぶ。川沿いに飛んでたりすると、土手の上を走ってるこちらと、高さも方向も同じで、まるで隊列を組むような感じにもなる。これなんて、気分はもうナウシカ

 なんてこともない住宅地だって、新鮮だ。何より、土地の起伏というのが、体で感じ取れる。車だと全然気づかないようなアップダウンに対して、自転車で走るとに敏感になれるのだ。起伏というのは、まさに大地のリズム。そういうのを、五感で感じ取ることができる。

 総じて言えば、「スケールが違う」ってとこか。スケール(=縮尺)というのは、拡大率が高ければいいってものじゃない。プラモデルだって1/72スケールよりも1/35スケールの方が、ぐっと手応えがあるよね。自転車は、歩行者の3倍程度のスピードで走る乗り物だ。車と比べると半分未満。そのスケールの差から、感じられる情報量が決定的に違うのだ。

 また一方で、自分との対話でもある。スポーツ的な乗り方をしていると、肉体というのは「自転車」という移動体の、部品のひとつだ。脚も心配も、マシーンとして覚めた頭で使わないといけない。

 こういう使い方をするためには、ママチャリ/アニチャリではだめで、スポーツ自転車が必要だ。数段の変速ギアをがちゃがちゃやるところから、道そして自分自身との対話は始まっていく。

 そして、スポーツ自転車は、歩行者と乗り物の「いいとこどり」でもある。ぼく自身はスポーツ自転車乗りのプライドにかけて「車道左側通行&信号遵守」を貫いている。でも、一方通行は守らなくていいし、歩行者専用指定も自転車については解禁されている場合が多い。