ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

危ない夢日記(4)

 夢といえば、江戸川乱歩の揮毫のことを思い出す。サインを求められると、こんな言葉を書き添えたんだそうだ。

「現し世は夢、夜の夢こそ真」

 でも、乱歩自身はそんなに夢見がちな作家ではなかったと思う。明るくて論理的な文章を書くし、作品として描いている事件だって、当時としては退廃的で猟奇的だったかもしれないけど(ぼくも高校時代にはドキドキして読んだね)、今ならラノベで出てきてもおかしくない水準だ。実際、きちんとした家庭を持っていたし、地域に根ざした生活もしていた。そして、後進の発掘に余年がなかった。多くの同時代人に尊敬されながら70余年の生涯を閉じ、勲三等と正五位を追贈された。

 乱歩にとっても、幻想の時代と現実の時代があったのかもしれない。作品は、角川文庫で30冊ぐらいは読んでいるけど、手当たり次第に読んでいて、書かれた時期なんて意識してたわけじゃない。いずれ腰を落ち着けて読んでみたいものだ。

 さて、最後にひとつエピソードを。

 若いころやって以来封印していたわけだけど、30代の頃、東京の学校で講師をやっていたとき、女子学生からいきなりこんなことをきかれた。

「なんで夢日記って、やっちゃだめなんですか?」

 この質問には面食らったね。なぜなら、授業で話した憶えがなかったから。いや、言ってなければ知らないはずなんだけど、まるでよくある悪夢が現実界に影響を及ぼしてきてしまったような、そんな気持ち悪さだった。