バッカスの微笑がえし(3)
オブジェクト指向としての酒において、カクテルというのは四重のインスタンスとなるだろう。
これもまた、ほぼ共通の手法によって成り立っている。具体的には、これ。
「蒸留酒になにか混ぜる」
この何かが「水」ではさすがにカクテルとは呼ばれない。でも「炭酸水」ならカクテル扱いだ(ex.ハイボール)。実際によく使われるのは、ジュースとリキュール。ともあれ、カクテルというインスタンスには、次のメソッドによって定義されることになる。
1.ベースとなる蒸留酒
2.混ぜるもの&添加するもの
3.混ぜ方
ベースとなる蒸留酒は、ジンとウォッカが多い。たぶん、無色透明である点が好まれてるんだろう。ジュースやリキュールにはカラフルなものが多いので、そうでないと見た目が損なわれてしまう。話題の始まりにあったミドリだけど、その名の通り鮮やかな緑色をしている(ほんと、かき氷のメロンシロップみたいにね)。もしウィスキーと混ぜたら、たぶん壮絶にまずそうな色になってしまうだろう。
2について、リキュール以外では、果実酒がよく使われる。例えばマティーニの材料であるベルモット、これは薬草で味付けされたワインだ(イタリア版の養命酒ってとこかね)。ちなみにベルモットには甘いのと辛いのとがあり、マティーニに使うのは後者のほう。そして、なぜか楊枝に刺したオリーブの塩漬けを添えることになっている(あれは焼酎の塩みたいなものかな?)。他、メインのリキュール以外にも他のリキュールを加えるとか、クリームだの玉子だのを混ぜるとか、いろいろとある。
3は、ステアかシェイクかという違い。マドラーでかき混ぜるのがステアで、シェイカーに入れて振るのがシェイク。口当たりやのどごしの違いを求めて選択する場合もあれば、都合でそうせざるを得ない場合もあり、案外重要なファクターだ。
ちなみに「蒸留酒がベース」といったけど、そうでなくてもいい。ただ、こういうのにはろくな思い出がないのだ。学生時代、ビールと日本酒を両手に持って無理強いしてくる先輩がいた。別の人がさらにワインまで持ってきて、嫌がらせだけを目的にしたようなスペシャルカクテルが作られたものだ。
これに名前を付けるとしたら? 「ワルヨイ」かな。