ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

バッカスの微笑がえし(2)

 酒という飲み物は、ほぼ共通の技術によって作られている。

 利用される現象は発酵。原料として「糖質を含む液体」を用意、この中で微生物を繁殖させ、アルコールを作らせるわけだ。後はそのまま飲んだり精製したり、あるいは抽出後に貯蔵したりとかで、いろいろな種類の酒になる。

 蒸留酒というのは、この精製の方法として蒸留を行った酒だ。ウィスキーだのジンだのと言っても、基本的に変わらない。原料として穀物があり、それを発酵させてアルコール混じりの原液を作り、何度かの蒸留でアルコール度数を高めていく。香料に漬けてからもう一回蒸留するとジンになり、そのままだとウォッカになる。そして樽に入れて何年も寝かしておくとウィスキーになる。穀物の代わりにサトウキビを使うとラムになるし、原液そのものを果実酒で代用するとブランデーだ。

 この辺、なんだかオブジェクト指向のようだ。クラスとして「アルコール発酵」と「蒸留」があり、前者だけのインスタンスとしてワインや日本酒が、両方の多重継承として蒸留酒があるわけだ。そしてリキュールはもうひとつ先にあるインスタンスで、何かを蒸留酒に漬け込んで作る。その「何か」というのが、薬草だったりナッツだったり果物だったりと、実に多様。梅酒もその一つで、梅を焼酎で漬け込んで作る。そうなると、沖縄の激辛調味料コーレーグースもリキュールの一種ってことになるのかな(ちなみに、泡盛島唐辛子を漬け込んで作ります)。飲み物として摂取したら頭おかしいと思うけど。

 ともあれ、発酵食品は偉大だ。そして、それだけに飽き足りなくて先へと進んだところが人類の偉大さだろう。蒸留酒というのは錬金術師の発明だけど、ゴールドなんか作るよりよっぽど人類に貢献したんじゃないかと思う。

 ではリキュールは? 「じゃ、とりあえずこれ漬けてみるか」なんてノリで次々に作られてったんじゃないだろうか。これはこれで人間っぽくていいような気がするのだ。