ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ハードにライトな物語

 一夜漬けの癖がある。ふだんそんなに勉強してないくせに、いざ仕事上の必要性が発生すると大慌てで勉強をはじめたりする。

 ミステリーを書こうとしていた頃にも、それがあった。勉強のためにたくさんの本を買い込んだのだ。『ブックオフ』が職場のすぐ隣にあるおかげで、そんなにお金をかけなくても、たちどころに本棚1列分ぐらいはたまる。これを机の右に積み上げ、どんどん読み進めていく。やがて読み終えると左側に。そして「次ッ!!」なんて叫びながら右に手を伸ばしていくわけだ。もちろん実際には叫ばないし、がんばっても一冊あたり二三日かかってしまうけど、気迫としてはこんな感じ。

 とはいえ、ただ読んだだけでは記憶から揮発してしまう。ミステリーだって、クイズやパズルというわけじゃない。謎解きよりもお話の流れのほうが重要なのはいうまでもなく、読者として頭に残るのもそういうところになる。結果、犯人が誰なのかは覚えていても、どんなトリックが使われたのかがさっぱり残らない。

 これではわざわざ本を買い込んだ甲斐がないというもの。そこで、読み終わった作品の記録をとることにした。

 作品名、登場人物、あらすじ、事件の概要、そして解かれるべき謎と答え。

 これを続けていれば、ユニークなデータベースができあがっただろう(そして、URLとってアクセス可能な状態においたりしたら、ちょっとしたテロだね)。実際には、ミステリーを書こうとした時期はすぐに過ぎ去ってしまったので、たいした蓄積はない。

 最近、ラノベに取り組んでいる。こちらは「書く」というよりは「書かせる」。顧問を務めているサークルで、公募の賞に応募させたいから。それでも、一夜漬け的に読まなければならない点はミステリー以上になった。そして読んだ後に揮発していく点もミステリー以上で(こちらはぼくの加齢補正も加わる)、やはり作品記録をとらなければと思った。そしてやってみて実感したのが、ミステリーという文学分野の素晴らしさだったのだ。