ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

Mr.サマータイム(2)

 サマータイムっていうシステムがある。

 夏の間だけ、国中みんなで時計をいっせいに進めてしまうもの。欧米では一般的で、BSの海外ニュース番組見てると「今日から夏時間です」なんて話題が入ってたりする。

 ぼくが最初に聞いたのは、高校生の頃だ。

 そのとき「なんじゃ、そりゃ」って思った。必要性というのは、理解できなくもない。でも、手段に納得できなかったのだ。時計じゃなくて、時間割の方をずらせばいいじゃないか……

 でもよく考えてみると、むしろ逆だろう。時計なんて人間の便宜のためにある道具に過ぎない。道具はあるじの都合に合わせるのが当然だ。

 なのにぼくはそれに違和感を持ってしまった。たぶん、時計という道具を時間そのものと同一視していたからなのだろう。“天が与えたもうた時の刻みを、人が己の都合で左右するなど、畏れを知らぬ行為である”なんてね。

 時間自体は変わらない。代わるのはそれをどう利用するかだけだ。言ってみれば、日付変更線みたいなもの。あれだって、どうにも釈然としない感じを受けるんだけど、実際にはみんな受け入れている。そもそも宇宙の開始からどれだけかたったある時点を「n日」と呼ぶのはあくまでも人間の都合であって、数字そのものが宇宙の法則に支配されているわけじゃないのだ。ほかの都合が優先するのなら、1つくらい遡っても問題ない。繰り上げた1時間は、夏の終りに付け足すわけで、帳尻はちゃんと合ってる。

 実際、この夏の早朝覚醒、眠くなる時間も早いんで、生活がそのまま前倒しになったようなものとも言える。言ってみれば、自然サマータイムだ。