ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

まもなくノーベル週(5)

 書き始めた当初は「まもなく」だったノーベル週、続々と発表されている現在では「たけなわ」になっている。しかも、なんと今年は物理学賞を日本の研究者が受賞した。

 考えて見れば、青色LEDというのは世紀の大発明で、人類社会への恩恵ときたら『ジャイアント・ロボ』のシズマドライブにも相当するほどだ。その研究と実用化を成し遂げた人なら、ノーベル賞ぐらいもらっても当然だった。なのに意表を突かれたように感じてしまう。それほどまでに、青色LEDはぼくたちの生活にあまりに普及しているということだろう。

 さて、前の記事で「科学者なんて誰も知らないしー」みたいなことを書いた。でも今回は、3人の受賞者の中でひときわ目を引く名前がある。中村修一教授、知財を学んだ人間ならおよそ知らないものはいない、青色LED訴訟の当事者だ。

 特許の場合、たとえ職務として行った発明でも、その原始的な権利は発明者個人のものになり、雇い主がその権利を元に特許を取得する場合には、相当な対価を支払わなければならないことになっている。そして中村氏は、元雇い主を相手に「相当な対価がまだ支払われていない」として、200億円の訴訟を起こした。一審では請求額を超える600億円超の権利が認定され、大騒動になった。この裁判、二審の審理途中で敗色が濃厚になり、結果6億円での和解となった。

 日本のマスコミの場合、めでたいことにはとにかく盲目的になってしまう傾向があり、ノーベル賞受賞者というと、素晴らしい人格者みたいな書き方になってしまう。だが、中村氏は文科系の人間すら知る有名人だ。和解直後の記者会見で「金額には全く満足していない」と表明している彼を、マスコミはどう伝えるんだろうか。