ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

これも「さらば」になっちゃう?(3)

 ぼくは企画屋だ。これは、かなりマーケ屋的な側面を持っている。そしてティーチャーとしては、マーケティングという知恵の普及に努めてもいる。ただ、マーケ屋にも実業系と虚業系とがある。何かを作る(創る/造る)ためにマーケティングを活用しようとする者と、何かを右から左へ動かしていくことを創造であると勘違いしている者との違いだ。

 一連のマクドナルドの行動には、虚業系マーケ屋の浅知恵を感じる。現場的な産業への従事経験も持たないまま、大学院からコンサルティング会社に就職、ディスカッションとレポート作成を仕事であるかのように勘違いしながら大人になってしまった人たちだ。彼らは、測れないものを数値化し、感覚的なものをキーワードに抽象化する。そしてできあがった数値とキーワードを物神化し、教義《ドグマ》を打ちたて、現実をその型にはめようとする。

 ゼロ年代マクドナルドのテーマは「ライバルつぶし」だったのだろう。競合相手が消えれば利益を独占できるという発想だ。どうやってとくれば、価格競争がいちばん。そこで徹底的に価格を下げ、競合相手を「ついていけない」状態に追い込むことを目指す。

 これをやるには元手が必要だ。そのため、コストを減らす必要がある。

「店員に掃除をさせるなんて無駄ですな。ファーストフードの主な顧客層を構成する下流層・若年層は、消費行動において“清潔さ”を問題にしていないというのが、我々のマーケティング・リサーチの結果です。客席には近づかないという前提で、スタッフを削減しましょう。あ、そうそう、店舗の照明も減らしてください」

 てなもんで、掃除、片付け、客の不適切な行動の牽制(=店の秩序維持)、そういったものを削っていった。

 財務的には成功したのだろう。ライバルは次々と脱落、マクドナルドはシェアにおいて3/4を占めるにいたった。だが熱中するあまり、「マクドナルド型のハンバーガー屋」というカテゴリー自体を下火にしてしまったと言える。