ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

これも「さらば」になっちゃう?(4)

 「スラム感」をキーワードに書き続けてきた。でも、マクドナルドに立ち寄らなくなった最大の理由は、実はこれではない。店がなくなってしまったのだ。

 名鉄宮前駅から熱田神宮に向かって歩く道の最初の信号のところに、それはあった。いつからなのかは知らないけど、ぼくが工学院で働き始めた十余年前の時点では、既に存在していた。どんな店かって言うと、まあふつうの路面店だ。入ってすぐのところに注文カウンターがあり、左に曲がるとテーブルが並んでる。朝はそこそこに空いていて、夕はそこそこに混んでいた。

 ぼくは、主に朝に利用していた。少し早すぎる電車に乗ってしまった時、時間調整するのに好都合だったからだ。それと、夕方にも利用した。職場を引き上げ、でも文章を書いたり本を読んだりとか、帰宅前に一仕事しておきたいときにちょうど便利だったからだ。職場からは少々遠いので、昼はあまり行ったことがない。ただ、メガマック発売の時にはわざわざ出かけていった。だけど、同じことを思った人が多かったのだろうか、びっしりと行列ができていて、結局買うことができなかった。

 そんな賑わい感のある店だが、突然消えてしまった。

 前後して、その理由が判明した。利益率の尺度を設定し一定以上に達していない場合には黒字であっても撤退してしまうという経営方針を、会社が導入したせいだった。

 「黒字でも潰す」というのは逆説的で、人々に印象づけやすい。ぼくには、『ハーバード・ビジネス・レビュー』で取り上げられるのを想像してニヤついいている担当コンサルタントのしたり顔がつい想像できてしまう。彼にとっては、その店に満足感と愛着を持ってときおり訪れる客など、路傍の石でしかない。そして、そういう元顧客がその後アンチファンになってしまうことも、考慮する必要すらないのだろう。

 参考までに、こんな本を。