ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

勇気を持って通せんぼ(1)

 地下鉄の長いエスカレーターに乗るたびに、悩むことがある。“追い越し車線”の存在だ。

 急ぐ人のために片側を開ける、これはいつのまにか登場し普及したルールだ。高速道路のハザード点滅と同じで、こういう自然発生なルールというのは、法学部出としてなかなかアカデミックな興味をそそられる。ただ、実際に起きていることに対して、2つほど疑問があるのだ。

 第一に、時間あたりの総輸送量という視点では、マイナスになってるんじゃないかということ。そして第二に、機材に大きなダメージを欠けているんじゃないだろうかということだ。

 目に見える問題点は、前者の方。スムーズに流れているぶんにはいいんだけど、朝夕のラッシュ時はそうはいかず、いつもエスカレーターの前に長い列ができてしまっている。でも、これは、立ったまま乗って行く方だけ。長いエスカレーターとなると「歩きたくない」人の比率も増えるからだろう、せっかちに歩く人の側には列はなく、立ち乗り側(名古屋では左側)の延長に、そのまま一列縦隊が延々と伸びてしまうことになる。「右側を開けておく」という新参のルールを、「列には割り込まない」という昔からあるルールと併用した結果だ。

 問題はその先にある。エスカレーター上の人の密度が、かなり違うということだ。立ち乗り側は一段おきに人が立っているのに、追い越しの列の方は、だんぜん密度が薄いのだ。

 もしせっかち組の密度が半分だとしても、倍の速度でエスカレーター上を通過するのなら、トータルするとプラスだ。でも、観察する限り、そんなようには見えない。しょせんはとぼとぼ歩いているだけなんだから。結果、グロスでみると、あの分離システムは、どうにもマイナスにしか働いていないように見える。