ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

勇気を持って通せんぼ(3)

 エスカレーターの“追い越し車線”問題が悩ましい理由が、ひとつある。自分にできることがある、ということだ。

 通常、社会運動の成功には、たいへんな労力を必要とする。昔、久米宏さん時代のニュースステーションで「世直しエイド」ってコーナーがあって、身近なところにあるちょっとした社会問題の解消を番組を通じて働きかけようっていう趣向だったんだけど、結果として定着したものは何もなかった(公衆トイレの水洗レバー、手で押してますか?)。インターネットのなかった時代の好視聴率番組でのキャンペーンでも、こんなものだ。

 だけど「エスカレーターで歩かない」の実現、これは実に簡単だ。追い越し車線の側で、そのまま突っ立っていればいいのだ。

 人に迷惑をかける? でも、それを気にする必要もないよね。この行為を迷惑だと思ってる人は、自分の行為がもっと迷惑だってことに気づいてないだけなんだから。だいたい、田舎のローカル線じゃないんだから、電車に合わせて慌てる必要なんてないのだ。乗り遅れたって、次のが来るまで10分もかからない。ピーク時だと、せいぜい5分。まあ、遅刻ぎりぎりのときはこの5分が生死を隔てるんだけど、そこまでギリギリで行動していることに問題がある。

 実は、何度かやってみている。ぼくは見た目のガタイが比較的大きい方なので、そういう役割にはもってこいなのだ。だけど、これはなかなか勇気のいる行為だ。