ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

『響』はもっとうまいよ(終)

 つい話を大きくしてしまった。

 今回のシリーズも前回同様、毎日新しい分を書いている。手元の“着想ノート”には、あれこれと展開していくためのネタが走り書きしてあるんだけど、「中華思想」から「マーケティング」に至るまで、いろんなことが書き連ねられてる。まあ、このへんのネタはいつか使える日も来るだろう。

 本屋を歩いてみたら、今月の『Pen』がウィスキー特集だった。発売日は『山崎』のニュースが流れるより前だから、編集長にずいぶん先見の明があったということなんだろう(ちなみにこういうのは、ありすぎても良くない)。

 そこで印象的だったのが、樽職人を紹介するページだ。

 ウィスキーという飲み物は、職人たちによって作られている。仕込みだけではなく、熟成したりブレンドしたりと、年数をかける分多くの種類の職人がいるわけだ。でも、樽の職人までは考えが及ばなかった。確かに言われてみれば、不可欠な構成員。単に工芸品としても凄い仕事している(だって、中に液体入れて30年とか使うんだよ)上に、酒という超級の感性飲料を扱うわけで、単なる木工とはわけが違う。「樽の内側を焦がす」なんて工程、知識としては知っていたけど、バーナーで適当にあぶる程度のことだろうと思っていた。実際にはもっと大胆な方法だったんだね。詳しくは、雑誌をどうぞ。電子版もあるようです。

 雑誌では取り上げられてなかったけど、もうひとつ欠かせない職人がいる。広告やマーケの専門家だ。日本のウィスキーは自然発生したわけじゃないし、自動的に普及していったわけでもない。強力無双なクリエイター集団によって「身近かつ憧れ」という微妙な存在での位置づけがなされた結果、こんにちの日本ウィスキーはある。その意味で、ウィスキーの父は竹鶴氏かもしれないけど、育ての親はサントリー宣伝部員なのだ。彼らは今もっていい仕事を続けている。味わい以上の悦楽に、ぼくたちは浸ることができるわけだ。

 ちなみに今回のPenの第2特集が「開高健」。これもまた手元のノートに走り書いてある名前の一つで、書きたいことは山ほどあるんだけど、いずれまたあらためて。