ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

BCR、ウィーラブユー!(6)

 挿話ばかりが長くなってしまった。

 iTuneストアで発見してからどうしたか。つまらない時代とはいうものの、便利な時代とも言える。とりあえず試聴してみた。

 だけど、聴いてみると、どうも違う。記憶に刻み込まれているレスリーの歌声と、違っているのだ。それで気づいた。ベイシティ・ローラーズは、激しくメンバーチェンジを続けていたバンドだったということに。こうなると、どうにも買いづらい。あの当時だけで2回もメンバーの交代があったし、期待して買ったらぼくのイメージしてたのと違う曲だったなんてことがありそうだ。結局、ダウンロードしなかった。

 ところで、ぼくがいちばん好きな曲は、やっぱり最初にレコードを手にした“イエスタデイズ・ヒーロー”。メロディやビートが好きだったんだけど、何しろ簡単な英語だから、歌の意味だってすぐ解る。

 「そうさ、おれたちは、

  過去のヒーローになんてなりたくないッ!

 この歌詞の皮肉さに気づかないほど、中学生は幼くない。彼らがやがて過去のヒーローになってしまうことは明白だった。ぼくたちの世代は、ビートルズグループサウンズの時代が終わってから物心付いているわけで、そうした過去のヒーローはうんざりするほど見てきている(――ねえ知ってる? 岸部一徳さんって、昔は“サリー”って名前でグループサウンズやってたんだよ ※豆しばの声で読んでね)。歌いながら、ぼくは嗤っていた。でも、その嗤いには、呪いが込められていたのだ。その頃、自分が将来ヒーローになることを、疑っていなかった。それが何であるかは関係なく、彗星のごとくデビューしてヒーローになれるつもりでいた。実際には、流星ですらない。

 ベイシティ・ローラーズ、その後もちょくちょく再結成しているようだ。しかも入れ替わりメンバーが両方いるとか、けっこうおおらかな形で(レイジーは、なんと5人のうちすでに2人が故人。何があったんだ!?)。要するに、彼らはしたたかに今を生きている。ぼくはといえば、過去のヒーローにすら、なれないでいる。