ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ソトメシ十番勝負(終)

 実際のところ、日本人のソウルフードは、ラーメンだと思う。そば屋以上に存在感を示しているのがラーメン屋だ。

 だけど実は、ラーメン屋が好きじゃない。っていうか、ラーメン屋に行列作る文化が好きになれない。マスコミがいくつかの店を祭り上げると、それにつられて人が並ぶ。ボロくても、汚くても、店員の態度が悪くても、それがまた美味さの根拠だと言わんばかりだ。そして、そういう食べ物になったことに対して、それ以外のラーメン屋もあぐらを書いている。はっきりいって、ほとんどのラーメン屋は、金を取り過ぎてると思う。スタンド式で「食い終わったら即出てけ」な商売してるくせに、客単価を千円前後で設定しているんだから。うまいのならいいけど、実際には雰囲気ばっかりだ。こだわりがどうのなんて店の中や外に手書きの看板出している店が、実際には大量生産の全国チェーンだったりするわけでね。

 ただ、こんなふうになる前の時代というのもあったのだ。

 学生時代の最後の年を、ぼくは笹塚で過ごした。新宿から京王線で1駅、下宿の窓からはNSビルが遠望できる、そんな場所だ。引っ越してまもなく、駅の近くにあるラーメン屋に入り、びっくりした。美味いのだ。単に味がいいだけじゃなく、ポリシーが感じられた。見た目の派手さは全くない。茶色がかった豚骨系の、視覚要素は全然考えてないような面構え。だけど、その面持ちもまた味と一体化した自己主張であるようで、ぼくはそれまでのラーメンへの見識を変えることになった。

 店の名を『ホープ軒』という。ぼくが笹塚にいる間はちゃんとあったのだけど、後で行ってみたら潰れてた。

 実はここは支店(あるいは暖簾分けかも)で、本店は吉祥寺にある。後に井の頭線沿いに越してから、そのことを知った。だけど、もう入れなかった。行列の出来る店だったからだ。そう、その間の何年間かで、ラーメンという料理のルールは大きく変わってしまっていたのだ。

 長く続けてきた、ソトメシの話。エッセイとくれば食べ物は定番かもって思って、今回10番勝負と銘打ってはじめてみた。でも、なかなか難しいね。何しろ、実際には10個も挙げられなかったし。

 食べることよりも、食べたことを文章に書くことのほうが、ぼくはどうも好きなようだ。また気が向いたら、書いてみよう。そのためには、せっせと食べに行かないとね。