ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

選挙に向けて思うこと(6)

 見えないから「ない」と思い込んでいたら、実はみえてないだけ…なんてことがよくある。

 例えば、銀行の窓口は3時で閉まる。

  「いいわね、あんたたち銀行員様はッ!

   3時で終わって、後はお茶でも飲んでりゃいいんでしょ?」

 こういうことを真顔でいう人というのは、決して少なくない。実際の銀行は「会社や個人に金を貸して利子付きで回収する」稼業であり、銀行員も当然そのために働いている。例えば、貸す先のリスクを考えたり、継続して貸している会社の業務内容をチェックしたり、場合によっては直接乗り込んで改善を図るとか、一緒になって新規事業を立ち上げるとか。だけど、こういう人達にとっては、ただ椅子に座って金勘定だけをしている仕事なのだろう。人は視界に入っているものを通じて対象を理解する。実際に「見ている」のは、目ではなく脳だ。脳にまともな想像力(と、それを支える若干の知識)がないと、目に見えているものだけが全てだ。

 同じことが、議員についても言えるだろう。

 見えるところでの政治家は、選挙の時以外はずいぶん暇そうな仕事だ。議会があるのは1年の半分もなく、その時だって暇そうに居眠りしてるか下品な野次飛ばしてるかだけ。でも実際にはどうなのか。

 政治という仕事の本質は、調整だろう。理詰めではどうしても解決できない問題がある。また、決して全員が満足して合意できない問題もある。こんな時、「いやあ山田さん、すまんが受け入れてもらえんやろうか。その代わりっちゃなんだが…」なんて感じで、誰かがまとめていかないといけない。市町村レベルだとゴミ焼却場とかがそうだし、国政レベルでは原発や軍事基地なんかが該当する。こういうことは、話し合いだけでは決まらない。特に、参加者が多ければ。市民全員参加なんてやった日には、100年議論したって決まらないだろう。でも、決めないことには、人の暮らしも守れないのだ。だから誰かが調整しなければならない。そしてその仕事は、本業の片手間にやるというわけにはいかないのだ。