デザインはスポーツか?(3)
デザインにどういうわけで興味を持ったのか。「魔法の正体を知ったから」ってとこだろうか。
子供の頃から、印刷物が好きだった。手で描いた線や塗りの、曖昧さだとかムラだとか、そういうのが嫌いだったのだ。文字もそう。「活字」のかちっとしたスタイルに憧れ、手書きのやぼったさを嫌っていた。ただ、そういう世界は、自分の手の届かないところにあるものだとも思っていた。
それがあるとき、わかってしまったのだ。そうした印刷物もまた、人間が作っているものだということに。
文字が実際には「写植」という仕組みを使っていて、それにはすごく沢山の種類があり、サイズや変形も含めて指定できること。そんなことが皮切りで、「印刷物を作るための仕組み」が見えてくる。本を買って知識を増やし、やがて縁があってデザインスタジオの手伝いをするようになり、その取引先の印刷屋さんとも親しくなり……なんてことを繰り返しながら、知識と経験値を高めていった。
もちろん「美」の追求も合わせてあるんだけど、この意味でぼくはエンジニアリングとしてのグラフィックスが先行していたといえる。そしてそうした興味が自然向いた先が、DTP。まだMacが100万円以上した時代で、実物を手にできる機会もないまま、ひたすら知識ばかりを溜め込んでいたのだ。