ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ぼくが弁理士をめざす理由(2)

 著作権法の何がヤバいのか。あえて詩的な表現をとれば「怪物化しつつある」ということだ。パテントトロールなんて言葉がある。パテント=特許で、特許権をネタにえげつない商売をしている連中への呼び名だ。だけど著作権の場合は、事情が違う。著作権という権利そのものが、既にトロール化しているのだ。

 著作権は、実に強力な権利だ。全く手続きを要することなく、創作した瞬間に、誕生する。そして一度生まれると、原則として著作者の死後50年という、途方もなく長い寿命を持つ(ちなみに特許権の存続期間は出願から20年で、権利化には審査が必要)。権利の中身は、具体的には禁止権。自分の作品の複製を、世界中の人たちに対して一方的に禁止することができるというものだ。また、真似や作り直しそして上演などの一定の利用も、複製と同じ扱いで、禁止の対象になる。禁止権は、全部または一部について、相手を指定して解除することもできるし、売ることもできる。そして侵害に対しては、損害賠償と差止請求ができ、加えて刑罰の要求もできる。法定刑は10年以下の懲役&1000万円以下の罰金と、重罪扱いだ(ちなみにこれは国家機密の漏洩と同じで、詐欺罪や窃盗罪よりも重い)。

 今、関係者を怯えさせているのは、期間の延長(70年にする)、そして罰則の非親告罪化だ。特に後者はただごとじゃない。親告罪というのは、被害者による告訴がないと事件化できないタイプの犯罪を言い、著作権侵害罪はこれに該当する。これが非親告罪化されると、警察は独自の調査で立件でき、捜査や身柄拘束を進めることができる。特に、バランス感覚を失している最近の警察当局を念頭に置くと、実に怖い話だ。昔の警察には、国家官僚としてのしたたかなバランス感覚があり、単に形式的に違法な行為であるというだけでは事件化しなかった。またそれが社会全体に及ぼす影響にも注意を払っていた。こういうのが今の警察には期待できない。

 だけど、ぼくが感じるヤバさは、そこではない。権利者がトロール化しているという事実の方だ。想定外だった連中が想定外だった権利を手にし、圧倒的な力で周りにダメージを与えている。それは足元の大地をも含んで、だ。