ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ぼくが弁理士をめざす理由(6)

 ソフトウェアの世界は、特にそういう言葉が使われる前から、グローバル化が進んでいた。創成期にはユニークな会社が多かったゲーム業界も、産業として確立することでどんどんグローバル化していった。その結果、アメリカ企業の悪いところまで、しっかり採り入れてしまっている。作った当人の作品を盗作呼ばわりし、買ってくれたお客さんが好きなように楽しむことを一方的に禁止するなんてのは、その現れだ。そして、時には平気で嘘をつく。

 かつて、ゲームソフトの業界団体であるCESA「中古ソフト撲滅キャンペーン」を行ったのを、ご存知だろうか。

 「ゲームファンの皆さん、

  ゲームソフトの中古販売は禁止されています。

  違法な中古売買をやめましょう。

  そして違法行為を続ける悪徳販売業者を撲滅しましょう!」

 なんて主張を、雑誌広告などを通じて大々的に展開したのだ。

 でも、著作権法のどこを読んでも「ゲームソフトを中古販売してはならない」なんて書いていない。それが主張できるのは映画だけ(頒布権といいます)なんだけど、これは配給制度を背景に映画だけに特別に認められた権利と解釈するのが、専門家の間では常識だった。

 実際の理由は、裁判で傍論として述べられていた言葉……「中古販売されたら新品が売れなくなる」……にある。もしこれで認められるのなら、自動車・家電やブランドバッグに至るまで、中古市場はいっさい不可ということになってしまうだろう。結局この主張は認められず、ゲームソフトの中古売買は全く合法であるという結論が、最高裁まで行って確立した。だけど、CESAがゲームファンに向かって「すみません、嘘ついてました」なんて謝罪したって話は聞かない。

 ともあれ、「自分の儲けが減る」というだけの理由で世間に向かって真実と異なる主張を堂々と延べる(しかも公的に否定されても謝罪ひとつしない)……もし個人なら、恥ずかしくてできるわけがない。でもゲーム会社はそれをする。もう立派なトロールだ。