ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ぼくが弁理士をめざす理由(8)

 ぼくにとって著作権との関わりはかなり古い。言葉を初めて知ったのは、年齢まだ一桁の子供だった頃だ。学校から押し付けられていた計算ドリルの片隅に書かれていた、こんな一文からだった。

 「このドリルを無断で複製することは、著作権法違反になります」

 当時は刑事ドラマ全盛期だったから、法律というのは好奇心が刺激されるテーマだった。刑法以外にもこんな法律があるということを知り、

 やがて年齢二桁の子供になると、作り手への志望が湧いてくる。そんな折、少年ジャンプの新人賞の要項で、こんな言葉を見つけた。

 「入選作品の著作権は、集英社に帰属します」

 オーサーになるという気持ちを持つ人は多い。そしてそれを育て続けた人間が、クリエイターになっていく。ぼくは、それと同時に「著作権法」への興味も育て続け、自分自身の問題として考えるようになっていった。

 おとなになってからは、ある意味法学士としての自分の“専攻”にもなっている。

 法学部とはいえ、実は政治学科だ。ただ、所属が何であろうと本当の専攻は自分自身で決められるというのが、大学のいいところ。政治学への興味は早々に失い、学術モードでの自分の専門は、2年の途中からもっぱら法律学になっていた。民法や商法など、いくつかの科目はきちんと履修している。著作権法は選択肢にはなく、実際授業の聴講もしなかった。だけど、ぼくにとってはこれこそが専攻だ。

 勉強と研究を分けるもの。法学部の場合だと、資料のレベルだろう。刊行された本を読んでいる限りは、たとえ高度な専門書でも、所詮は勉強だ。でも、生の判例を調べたり、国会の議事録を通じて制定過程を調査したりしていくと、研究になる。そんな意味での研究を、法学部にいた4年間でただ一度だけした。この対象が著作権だ。

 そして今は、担当する科目の一つに「著作権」があることから、裁判例のチェックなどにも継続的に取り組んでいる。