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ぼくが弁理士をめざす理由(9)

 著作権を中心に、クリエイターの守護者を任じる弁理士。どう活動するのかは、あれこれと構想している。ただ、一つ大きな問題がある。弁理士試験というのが「主に特許法」の試験だということだ。

 これはぼくにとって大きな障壁だ。先述のように、著作権法はほとんど研究者のような目的意識で取り組んでいた。でも特許法はまだ初学者もいいところなのだ。言い換えれば、「特許頭」が出来上がっていない。予備校教材を使って勉強を続けてきたが、正直、まだスタート地点にすら立てていないような気がする。ちなみに、著作権の方は、予備校教材をいっさい見ていないけど、過去問は8割正解だ。

 なんでこんなに違いが出てしまうのか。

 ことは特許法そのものではなく、弁理士界におけるその扱い方だ。

 まがりなりにも本式の法律学を学んだ身から言わせてもらえば、弁理士試験というのはとても法律専門職の試験とは思えない特徴がある。法条文の解釈に正解が決められてしまっているということだ。法学部では、自分で考えることを求められる。だけど弁理士試験は違う。特許庁自身が「工業所有権法逐条解説」(通称『青本』。でも青くないよ)を著していて、これが公認解釈なのだ。これと異なる解釈は、例え筋道だったものでも、正解ではない。結果として、青本の内容を覚えることが、弁理士試験に合格するための条件となる。でも、こういう構造は、法律学の常識から言うと、非常識なのだ。

 法律というのは、バランスだ。特に民事法はそうだ。知財なんてのは本来民法(財産法)の特則法だから、使いこなすためには民法の素養が欠かせない。なのに、弁理士業界は法律のバックボーンを持っていない。皆、理工系の出身で、法律というものを「守るべき規則集」としか考えていない。利益衡量論すら知らないまま自分をロイヤーだと思っているのだから、たちが悪い。

 でも、試験問題を作っているのは彼らの方。より現実的には特許庁の官僚……理工系の大学院を出たテクノクラートということになる。

 試験というのは、受からないと意味がない。だから、こういう不満というのも、合格できない状態で言っていても、負け惜しみにしかならないだろう。