平気で半世紀なわけですよ(3)
そんなわけで区役所職員になったぼくだけど、この国にはもうひとつのスパイ絡み組織があり、他ならぬ区役所(職員)が監視対象になっていることを知ったのは、それからだ。
一般的な就職試験では、あらゆることが採否判定の材料になる。現役入学の体育会出身者で英語ができて役に立つゼミ出身なんて学生は有利だ(就職貴族なんて呼ばれてたよ)。だけど、地方公務員の試験は、ほとんどペーパーテストだけ。ぼくがそうであるように、二浪してようが、サークル活動が漫研だろうが、ゼミが政治学原論(しかも2年生でやめた)だろうが、不利になるわけじゃない。そして、「マルクス主義研究会にいて、中国語と朝鮮語ができて、労働法のゼミを出て、8年生まで大学にいた」…なんて学生でも、試験に合格すれば採用されてしまう。一般企業には入れてもらえなかったそういう人たちの濃度がどうしても濃くなっていくわけで、まあ公安組織だって監視の対象にしてくるわけだ。
入庁式のとき、一応宣誓するわけですよ。人事スタッフの先導で、こういうことを唱和するわけ。
「私は日本国憲法に忠誠を誓います。
暴力的手段で転覆しようとする団体に過去属しておらず、
未来も属さないことを誓います」
でも、あきらかにこの誓いに反している職員というのがいるんですよ。団体名を書くのは差し控えるけど、その筋では極めて有名なのに入ってる人とか。
単にスパイになりたいのなら、こういうのを監視する役所に入ればよかったわけだ。まあ、実際には陰気かつ陰険で気の滅入りそうな仕事だけどね。
実は公務員試験情報を漁っていた頃、公安調査庁というのにちょっと関心を持ったことがある。ただ、当時はキャリアの試験しか見えていなかったし、そもそも今ほど情報が豊富な時代じゃないー役所自身もあまり情報を発信していなかったーから、正直なところ、どういう組織なのかわからなかったのだ。