ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

最新という憂鬱(3)

 これまで何台のパソコンを使ってきただろうか。数えようと思って、やめた。「今まで食ったパンの枚数」と同じだね。「パソコンを使う」という行為は、今や当たり前。もう、そんなこと覚えてられるほど、新鮮じゃない。

 でも、印象的だったマシンというのはあるわけだ。エプソンのPC386GS、これをいちばんに挙げたい。

 80年代の終わり頃、日本のパソコンの主流はNECのPC9801ファミリーだった。5インチフロッピードライブを2基搭載したビジネス用デスクトップ機を頂点に、ホビー機や入門機そしてノートPCにラップトップと、フルラインナップを構成していた。ただこのアーキテクチャ、画面表示能力的には貧弱で、640✕400ドット・16色というスペックでしかない。ハイレゾ機と呼ばれるシリーズを除いては。

 これは、PC98シリーズにあって、例外的に高解像度画面を与えられている派生版だ。画素数は1120×750ドット(色は残念ながら同じ16色)。ただ商品システム上は「オーバー・ザ・トップ」という位置づけで、CADの類にのみ使うことを前提に、非現実的なプライシングがされていた。

 そんな中、エプソンから出てきた「買える」ハイレゾ機が、この386GSだったのだ。

 実際に使い出して驚いたのが、システムフォント。当時の文字ベースパソコン一般のスタイルと同じで、黒い画面に白抜きで固定サイズの文字が出るというものなんだけど、なんと24ドットの明朝体だったのだ。

 当時のDOSユーザーにはお馴染みの

  「コマンドまたはファイル名が間違っています」

 のエラーメッセージも、迫力ある明朝で書かれると、厳かに宣言されているように感じられたものだ。