ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

最新という憂鬱(5)

 その新生活には、幸せが待っていたのか。そんなはずないことは、3.0時代のWindowsを知ってる人ならわかるよね。Windowsと同時に購入した結果、386GSは、ぼくにとって忘れ得ぬマシンとなったのだ。

 一言で言えば、「貢いでも貢いでも決して満足しない、ボディコン女」。

 まず、起動が不安定だった。

 95以前のWindowsは、DOSから立ち上げる必要があった。コマンドラインから「win」とかいったコマンドを打ち込んでやるわけだ。カラカラとハードディスクが回り、「MS Windows 3.0 by EPSON」みたいなことが書いてあるかっこいいスプラッシュ画面が出る。そしてその画面のまましばらくカラカラ回った後、また元の黒画面&プロンプトに戻ってしまう。

 こりゃ腹立たしいよね。注文を受けた店員が「はい、よろこんで!」なんて返事したまま突っ立ってるようなもの。でも、こんなのは序の口だ。なんとか起動しても、その先もたいへん。冗談じゃないほど、重いんだね。そして突然「原因不明のエラーにより終了します」と一方的に宣言して、黒画面に戻ってしまう。DOS時代の常識として贅沢極まりないはずだった環境は、Windows様からはどれも鼻で笑われるようなチープな代物だったのだ。

 ここから、出口の見えないパワーアップが始まった。

 最初にやったのが、メモリの増量。とりあえず倍に増やしたけど、これでもだめで、さらに増設してたしか8MBにまでしたように記憶している。ハードディスクも、45MBでは「どうにか入る」程度。結局、120MBのを買ってきて取り替えたんだけど、これでもあっという間に食い尽くされてしまった。CPUもそうだ。サイリックスcx486っていう「インテル80486互換」と称するCPUがあり、これとの換装までしてしまった(本物はソケットが異なり、取り替えて使うことはできない。サイリックスはピン互換で、80386を抜いたところにそのまま突っ込めた)。

 あと、グラフィックス。それで選んだはずの98互換のハイレゾモードだけど、これは結局のところ「高解像度になる」というだけのことで、Windowsに適した仕組みで動いてたわけじゃないのだ。そこでWindowsに的を絞ったグラフィックアクセラレータ。エプソンから『PCSKB』(ちなみにネット界隈では『PCすけべ』なんて呼ばれてたよ)っていう純正品が出ていて、その導入も真剣に考えたことがある。真剣にならざるを得なかったのは値段。10万円近いプライスタグがついていたと思う。今ならパソコンそのものが余裕で買えるね。

 不満とイライラの元は、実際にはWindowsのせいだ。でも、放送局への批判がアナウンサーに向いてしまうのと同じで、ぼくの理不尽な怒りは全て386GSにぶつけられることになったわけだ。