最新という憂鬱(6)
実際にWindowsが普及し始めたのは、この後のバージョン3.1からになる。見た目とか使い勝手とかは3.0と基本的に変わらないものの、動作が格段に安定した。何しろ、確実に毎回起動するんだからね。さらに、軽くなった。バージョンアップにともなってマシンスペック的な要求水準が下がるなんて、空前絶後だ。
この習慣がマイクロソフトに根付いてくれれば、みんな幸せになっただろう。でも、そうではなかった。次のWindows95以降、従来品の倍ぐらいのスペックを求めるのが、デフォルトになってしまった。そしてマイクロソフトの困ったところは、新OSの要求スペックの下限を、実用域のはるか下においてしまうところだ。そんなマシンじゃ起動するだけで精一杯なんてあたりを「これ以上のマシン環境なら、ご利用になれますよ」扱いでアナウンスする。
新たなユーザーがそれを真に受け、トラップにはまる。そして腹黒い販売業者たちも、これでにやついたわけだ。型落ちの使いものにならないマシンを、事情に暗い素人相手に売りつける。そんな時に、マイクロソフトが発表した要求スペック表が役に立ってしまった。
そうして考えると、3.0のWindowsを冷ややかに見送ろうとしたNECは、良心的な会社なのかもしれない。なんのかんの言っても、エンジニアが主導権握ってた会社なんだろう。一般ユーザーがGUIやりたいなんて言っても、
「お客さん、まだそんなことする必要はありませんよ。
CUIのOSで十分ですから、
今までどおり低解像度マシン使っててくださいね」
ってなもの。