ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

直球勝負、ゲームデザイン!(5)

 提案者とは、何か。

 ゲームデザイナーは、新しい遊びを作る。ただ、ひとりで作るわけじゃないから、他人に提案しなければならない。まずは自分のボスで、次にプロデューサーなどの決定権を持つ人に対して。企画が通ればスタッフに向かって提案する必要がある。

 提案というのは、相手を説得するということでもある。だからその内容は、理由の通ったものでなければならない。「ぼくはこれが作りたいから」じゃ、「へー、そうなんだ」で終わりだ。そういうゲームを作る意義(そしてプレイする意義)を、ちゃんと納得させられないといけない。また、気にするポイントも相手によって違う。クリエイターなら「どうやって作るのか」「自分は実際に何をするのか」をまず気にするし、自分にとってそれを作ることが魅力的かどうかにも関心が高い。プロデューサーが気にするのは、利益が上がるかどうかだ。いくらで作れるのか、そしていくら稼げるのか。その前提になるのが「どういう人が買うのか」ということになる。この意味でプロデューサーはプレイヤーの代理人でもある。

 そしてゲームデザイナーの提案の相手というのは、最終的にはプレイヤーだ。このへん勘違いしてはいけない。クリエイターの仕事はお客さんの望むものを提供することだけど、それは「リクエストに応じる」ということじゃない。顧客が思ってもいないものを提示してみせるのが、本来の仕事なのだ。「“ストII”あれば他なんもいらないっすよ」なんて言っている意固地なプレイヤーに、「まあそういわず、これやってごらんよ。面白いよ」と、新しい遊びを提案してあげるわけで、この提案者としての側面は、ゲームデザイナーの本質といえるのだ。