ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

シッポは既に導火線(3)

 ぼくが司法試験を受けたのは、考えてみたら、まだ昭和だった頃だ。

 当時の中大生はよく「記念受験」をした。法科大学院への入学が前提になる今とは違い、誰でも受けられる一発試験だったのだ。ぼくのもそんなものといえなくもないけど、ちょっと違う点がある。就職一年目だったってことだ。当時の制度では、法律科目が問われる部分は正式には「二次試験」で、ふつう3年生のときに受ける。でもぼくは一般教養を4年生まで引きずってしまっていて、在学中は受験資格がなかったのだ。

 東京での司法試験会場は、早稲田大学。馬鹿でかい分散キャンパスの大学であっても不思議と知り合いにぶつかるもので、会場に向かって歩いているとき、2学年下の後輩女子とばったり出くわした。

  「先輩、今年は受けられたんですねっ!

 なんて明るく言ってきた彼女は、弁護士の一人娘で、受からなきゃいけない点についてのプレッシャーははるかに高いんだけど、1年目の受験とあっては同じ程度に余裕だったわけだ(今はきっとバリバリの現役なんだろうね。連絡手段もないからわかんないけど)。

 これに比べると、今のぼくは孤独な独学者だ。一応“通信講座”と称するものの受講生ではあり、論文の答練で教室にも行ったのだけど、大学生とは比べようもない。答練で会話を交わした人も二人しかいなかったし(教室全体でも6人ぐらい)。

 去年の受験で、実は当日焦りまくった。名古屋の弁理士試験の会場は星城(成城じゃないよ)大学で、これは地図的には駅に近いんだけど、実際には「崖」といってもいい急斜面を隔てた丘の上にある。駅についた時点でもう開始寸前の状態、坂の遊歩道を駆け上がり、そのまま会場まで駆け込んだ。名鉄ローカル線の普通電車ののんきさを知らなかったための悲劇で、まあぼく自身がのんきだったってことだけどね。