買えないッ!(2)
知的ディレッタントというのは繊細な生き物で、文房具というのはその繊細さがいちばん発揮される局面で使われるものだ。この人種、退屈とマンネリを嫌うくせに、様式をも欲する。そして、様式が確立してしまうと、もうそれがないと行為自体ができなくなってしまう。まあ、なんてめんどくさいんだか。
実は最近買えなくて困ったものは、これだけじゃない。
コーネルメソッドのノートを、長いこと愛用していた。コーネル大学のビジネススクールで開発されたとか行った触れ込みの商品だが、そういうセールストークはどうでもいい。要は3ペイン型のノートで、下部に見出し&要約用のスペースがあり、左に見出しやキャプションに使える柱スペースがある。残りの部分が本文用で、他が白無地なのに対し、こっちは罫線または5ミリ方眼だ。
これはぼく様式においては「勉強用」で、ある特定のスタイルで勉強をするとき、他では代用できない存在になっている。ただ、どこでも売っているものじゃないから、まとめ買いしていた。そして、いつでもそんな勉強をするわけじゃないから、単なるストックになってもいた。ところが、これが仇になってしまった。発売中止になっていることに、気づけなかったのだ。
買いに行ったのは、最近はじめた勉強のため、あれこれ考え、手元に若干残っていたルーズリーフ型のコーネルメソッドを使い出した。そして勉強が順調に進んだ結果、使い切りが見えてきた。そこで都心の方へ買いに行き、ハンズ、丸善、ロフト、もう1軒のハンズと、およそ名古屋で望みうる可能性の全てを試した結果、それが既に喪われたアイテムだったことを悟ったのだ。
手元には、リングノートだったコーネルメソッドのシートもある。使用済みノートの余りページを回収した分だ。これと未解体の備蓄分ノートを使えば、一応のページ数にはなる。ツイストリングノートを使うという前提で、こちらに乗り換えるべきか。しかしまた終わりは来てしまうのだ。