ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

雑誌が消える!(2)

 なんで雑誌じゃなきゃだめなのか。今の時代なら、比較対象はインターネットってことになるだろう。となると答えは簡単。情報の、量とゆらぎだ。

 先述の初歩のラジオ。タイトルで断ってあるぐらいで、まあそう難しい内容とは言えないものの、ほんとうの初心者だけに特化してるかっていうとそうでもない。一つ上にある姉妹誌ラジオの製作への橋渡しとして、そっちの読者に近い水準の記事も載ってる。これが量、特にその奥行き成分だ。

 そして、ゆらぎ。ラジオの雑誌だからって、ラジオだけをやってるわけじゃない。オーディオや無線のような部分までを含んでいた。当時のオーディオでは真空管はまだ現役だったし(高級品じゃむしろデフォルト)、一方でラジオなんかではICチップも使われていて、その全領域がカバーされることになる。

 また、時代を期せずして先駆けてしまうこともある。例えばシンセサイザー。これをぼくは「初歩のラジオ」で知っている。今となっては純粋に「楽器」である当時はどちらかというと電子系ホビーの対象だったのだ。また、ぼくには記憶がないけど、コンピュータの記事もあったかもしれない。TK80は、既に発売されていたはずだし。

 ともあれ、人はそれほど合理的じゃない。自分が何をしたいのかなんて、解ってるはずがない。わからないから、情報が欲しいのだ。それで、情報がグロスで売られている紙媒体=雑誌を買う。既に一定レベルに達している人なら、自分にとって新鮮な記事だけを読むだろうし、初心者の場合は特集からベタ記事さらには広告まで、しっかりと読む。あらかじめ「読みたい」と思っていた記事なんて、1冊の中では僅かだ。思ってもいなかったものが提示されるから、魅力がある。

 だけどインターネットという仕組みは本質的にプル型で、自分が求めていないものは手にすることができない。プッシュされる情報ときたらGoogleのサジェスチョンとか楽天Amazonの「あなたにおすすめの商品」だけど、これはプルし続けた結果を反映したものにすぎない(しかもそんなに高級なアルゴリズムとは思えない)。