ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

眠るように?(4)

 頭を打った後、ぼくはソファの上に戻った。でも、そのまま眠るというわけには行かなかった。

 何しろ、脳自体は痛くも痒くもないのだ。こうしている間にも、硬膜なりクモ膜なりの下で血管がブチ切れ、じわじわと血の塊が広がっているのかもしれないではないか。

 ここで気を失ってしまったら、そのまま終局まで突き進む羽目になってしまう。そうなる前に対処しないといけない。頭痛とか吐き気とか、予兆を見逃さないようにしないと……ってなもんで、起きてたわけだ。

 当然暇だ。だけど、何かをしようという気は起きなくなってしまっていた。目の前にはテレビのリモコンがあったし、またちょうど面白くなり始めたばかりの読みかけの本もすぐ近くに置いてあったのだけど、なぜか手に取る気が起きなかったのだ。

 こういう意欲の減退というのが、どうにも予兆のように思えてきてしまう。

 結局、「起きている」というよりは「眠ってない」の状態で、そのまま朝を迎えた。

 頭はとりあえず痛い。もちろん強打してるんだから、外科的には痛いに決まっている。感じるのはその成分だけで、内科的な頭痛はない。でも、油断できやしない。もしかしたら、痛さの種類を取り違えているだけかもしれないじゃないか。朝ごはんも食べられる。咬筋が痛いから、あんまり熱心にはなれない。その事実もまた、内科的な脳損傷への疑念に変わってしまう。咬筋の痛さというのは、吐き気とかなんかを誤認識してるんじゃないだろうか、みたいな。