ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

「語る」を語ろう、戦争(1)

 岩波ホールで「戦争レクイエム」という企画上映を行っている。黒木和雄監督の戦争を扱った映画4本を、連続して上映するというもの。キーワードは「日常の中の戦争」。描かれているのは戦場ではなく市民生活の方だという。

 こういうテーマの設定は嫌いじゃない。それに、芸術至上主義的な、あるいは社会運動的な視点ではなく、きちんと商業作品として作られているのなら、なおのことだ。それでも、ぼく自身のオーサーとしての傾向なんだろうか、こんな場合でも「見て楽しい」を追求したくなってしまう。

 イギリス映画(だと思う)に、『戦場の小さな天使たち』というのがある。これが、これほど人を喰ったタイトルもないくらいの、快作だ。

 舞台は第二次大戦中のロンドン。爆撃で破壊されつつ都市で暮らす少年が主人公だ。家族は、両親と姉妹。ただある日父親が愛国心に目覚め、軍隊に志願してしまった。で、残された家族は暗い生活を送ってるのかというと、これがとんでもないのだ。

 まず主人公。こいつは実はかなりのワルガキで、他人の家に仲間と一緒に入り込んでは荒らして回る。爆撃でできた瓦礫の山なんて、こいつらにとっては砂場みたいなもの。できたてホヤホヤの廃墟に入りこみ、歓声を上げながら荒らして回っている。一方、ティーンエージャーの姉は、ボーイハントに夢中。ロンドンには、連合国各国からパイロットたちが集まっていたのだ。ストッキングがなくて、生足にペンで線を入れてごまかしてダンスパーティに参加した彼女は、カナダ人パイロットと懇ろになる。

 そんな主人公の自宅もついにドイツ空軍の餌食となり、瓦礫に変わってしまう。やむなく一家は母親の実家に疎開するのだけど、そこでもまた一騒動待っているのだ。

 こんなエスプリに満ちた映画、最後はこのひとことで終わる。

「わが人生最良の日々!」

 ぼくたち日本人は、こういうテイストの作品を見ることはできない。