「語る」を語ろう、戦争(2)
戦争体験を直接聞く機会というのは、まあ今の子どもたちには難しいだろう。でもぼくが小学生だった頃というのは、戦争が終わってからまだそんなに経ってたわけではない。ファミコン登場から今現在までの年数よりも、それは短いのだ。というわけで、今では大学生の卒論になりそうなそのことが、当時は小学校の宿題になっていた。
で、そのヒアリング結果から言うと、実際の経験事実はともかくとして、テイスト自体はこの映画の方に近い印象を受けるのだ。
……空襲警報が鳴ると工場が休みになる。これが嬉しかった。外に出て土手の上に上がって、ぼんやり空を見ながら警報解除を待っている。すると、うんと遠くの空の上に、飛行機が集団で飛んでいる。
「あれがB29だ」
年長の男性がそう教えてくれる。やがて、遥か下の方でチカチカ光るものがあって、高射砲弾だということに気づく。そもそも、飛行機のいるところに届いてない。
「あんなのあたるわけないですよね」
「高射砲の世界じゃ、
百発撃って一発でも当たれば、“百発百中”って呼ぶんだとさ」
やがて飛行機の集団から、ぱらぱらと何かが落とされる。
「わー、うんこ落としたぞー」
誰かが叫び、どっと笑い声が起こる。
そうこうしているうちに、B29の編隊に、小さな飛行機が近づいていく。日本の戦闘機らしい。
「やれーやれー!」
土手の上からみんなで応援。やがて煙が出て、飛行機が落ちていく。
「やったー!」
たちまち拍手喝采。でもよく見たら、落ちたのは日本の戦闘機の方だった……
以上は、義務教育が終わり、陸軍兵器廠で働いていた母の話。その他、女工仲間と正月休みに夜通し遊んだ話とか、全体を通して暗いトーンはない。