ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

特殊能力でもオカルトでもなく(1)

 本さえ読んでいれば世の中がわかるなんて思ってるバカは、もう今の時代いないだろう。でも、本すら読んでいなければもっとだめって真実に気づいてないタワケは、けっこういるような気がする。

 もちろん「世の中」というのはいろいろな側面の寄せ集めでもあって、これ一冊読んでおけば全部だいじょうぶなんて便利な本はない。だから、バランスのいい完成された人間になろうと思ったら、いろいろな本を読む必要がある。ぼく自身は「完成された人間」たる自分を夢見てはいるけど実際には程遠く、ソクラテス以来の伝統…“無知の知”を、いつも実感させられている。だから、せっせと本を読まないといけない。

 ここで問題になるのが時間だ。文庫や新書ですら1日2日かかり、ハードカバーなんかだと数日かかることも少なくない。「やるぞーッ」と意気込んで分野の本まとめ買いしても、結局時間的に読みきれないのだ。

 そんなわけで「速読術」は、ずっと気になっていた。

 とはいえ、それはとても現実とは思えなかったりもしていたのだ。「さあ、この術を憶えれば、空を飛べるんだぜ」と言われているようなものだ。そして紹介されている技法ときたら、「視点を固定してページ全体を見るようにしながら手を止めずにページをめくりましょう」なんて調子。「自分は飛べると思いながら、崖から一歩目を踏み出しましょう」と言われてるのと、そんなに違わない気がしてしまうものだった。

 その意味で、この夏は大きな収穫があった。速読ができるようになったのだ。まだ身につけたばかりだからそんなにスイスイじゃないけど、新書なら45分、ちょっと厚くて文字の細かい文庫だと90分ぐらいで読めるようになった。読めずに溜まっていた本が着々と消化されてきていて、メタな達成感に浸っているのだ。