ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

昔は泣き喚いたものだけどね(2)

 クラウドサービスが登場する以前、ファイルの同期というのは、PC運用の一大テーマだった。

 あの時代、多くのPCユーザーは、ノートPCとデスクトップ機の2台体制だった。パフォーマンス的には後者のほうがいいから、自宅ではそっちを使いたい。でも、そうなるとデータが二元化してしまう。場合によっては、職場とか学校とか、第3の使用環境も加わることになる。これら複数のマシンに入っているファイルをどう更新するのかが、PC使いにとっての大きな関心事だった。

 がんばって「卓上LAN」を構築してたときもある。オールマックなら、AppleTalkがあるから簡単だ。ただ、当時のAppleのノーパソは、でかくて高くて重くて遅いという、とても残念な代物。結局「デスクトップのMacWindows入のサブノート」っていう、かなり茨の道を行く環境でやっていた。

 同期しないなんて荒業で過ごしてた時期もある。全ファイルを収めた外付けのメディアを常に持ち歩き、使うときにつなぐわけだ。最初は20GBのハードディスクで。やがてUSBの容量があがってきたらそっちで。ただ、これは無くしやすくていつも冷や汗モノだった。

 さらに、同じマシンをどこでも使うとかね。VAIO-C1(とっても小柄なノートPCだよ)を使っていた時は、実際そうだった。職場と自宅にそれぞれ外付けディスプレイがあって、そこに持ち歩いてるC1を繋げてた。

 こんな苦労も、完全に昔語りだ。今、ぼくは、Dropboxを使っている。当時のことを思うと、夢のように快適。その環境にインストールさえしておけば、後は何も考えなくても、同期ができてしまうのだから。存在を感じさせないシステムが、何と言ってもいちばんいいシステムなのだ。

 で、完全に依存してしまっていたぼくには、その危うさも見えていなかったのだ。

 クラウドは、常に忠実だ。うっかり間違ってファイルを消してしまった時も、迅速に対応して、全ての環境を「そのファイルが存在しない」に揃えてくれる。OSレベルで用意されている緊急手段としての「ゴミ箱」も、Dropboxのファイルに対しては作動しない。