ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

昔は泣き喚いたものだけどね(4)

 そもそも、なぜファイルを上書きしなくちゃならないんだろうか。

 パソコンは、そういう仕組みになっている。でも、テキストファイルなんて、本当は消さなくてもいいのだ。ひたすら追加し続けるような仕組みでも構わない。

 むかしむかしのコンピューティングでは、リソースというのはとても貴重なもので、1バイトたりとも無駄にはできなかった。工学系連中が語末の音引き記号を省略したがるのも(つまり『コンピューター』と書かず『コンピュータ』、同様に『メモリ』『コンパイラ』『デバッガ』『プログラマ』……)、音引き記号の1バイトを節約するためだ。でも今は違う。テキストファイルに限定すれば、メディアの容量なんて、事実上無限大だ。

 日本語の1文字は、2バイト。毎日原稿用紙30枚分の文章を書いたとしても、一ヶ月休みなく続けて、ようやくフロッピーディスク半分くらいだ。1年続けると、8メガバイトくらいか。一方、1円玉の内径よりも小さいminiSDですら、容量の単位はギガ。しかも、32とか64とか、かなり上の方で語られている。

 だから、現代のエディタなんて、わざわざファイルを上書きする必要なんかない。セーブするごとに全て新規ファイルってことにしたって、問題なんかないはずなのだ。1人のライターが一生涯に書く全ての文章を、推敲で書き直した分を含めて全部残したとしても、たぶんminiSDに余裕で入る程度だ。