せんとくんの時もそうだった(1)
「流行は醜悪だ。だから、新しくなる」
なんて言葉を残したのは、バーナード・ショウだったか。「デザイン性を追求」をしていくと、だいたい気持ち悪くなる。市民から出てくるそんな本音を封殺する言葉として、供給する側はいつもこんな殺し文句を用意してきた。
「だから素人は困るんですよねえ。この良さ、なんでわからないんですか?」
でも、それは専門家に権威を認める時代の産物。ネット時代の今日では、市民は思ったことをずけずけという。群衆がみんなして王様を取り囲んで、裸だ裸だ!と叫ぶ時代になっているのだ。
何の話かっていうと、新国立競技場のことだ。
当初案。建築家の中では流行様式だったのかもしれない。でも、圧倒的日本国民は「ノー!」を突きつけた。まさにネット時代。
ぼくは、これでも一応専門家の側だから、デザイン……特に工業デザインのトレンドについてはけっこう詳しい方だ。ただ、やはり王様は裸のように見えて実際に裸で歩いている時もあるわけで、そう叫ぶことは重要な事なのだ。王様が裸っていうのは、王様個人の恥だけの問題じゃないからね(暗殺される危険性が増えてしまう)。で、本音で言わせてもらうと、あの第一案は、とても醜いと思う。そういう悪い冗談みたいなものがパーマネントな巨大建造物としてそびえ立つというのは、人類文化史的あるは社会学的には意義深いことかもしれないけど、気持ち悪い。この点では、ネット民と同じだ。
そして出てきた2つの案。これは無難で、やはりこういうものこそがふさわしいとも思う。
だけど、同時に思うのだ。せんとくんを見た時も、やっぱり気持ち悪かったよね、と。