ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

ゲームほど素敵な仕事はないッ!(4)

 ここで1つ確認しておこう。デザインは、プロセスだと言うことだ。

 少なからぬ人が勘違いをしているのだが、デザインというのは「卓越した個人による芸術的な創作活動」ではない。もちろんそういう要素はあるのだけど、あくまでも要素にすぎない。本質は、プロセスなのだ。

 1つの製品が作られていく中、立場の違う様々な担当者が参加することになる。製品とは常に多面的なものだ。そのどれかだけを切り出して、もっぱらそのためだけに使うというわけにはいかない。単純なものなら、ひとりの担当者が多面性に配慮することでもなんとかなる。だけど、ある程度以上の複雑さを持つ製品カテゴリーでは、一人の人間ではどうしたってカバーしきれない。だから大勢の担当者が参加するのだ。そしてデザイナーというのは、そのプロセスをまとめる立場になる。

 言い換えれば、デザインという行為は、デザイナーの頭の中(&机の上)で行われるのではない、ということだ。実際にそれに携わっている人は、上述の「多くの担当者」に他ならない。そして、それを仕切る役として存在しているのが、デザイナーなのだ。

 もちろん、簡単なことじゃない。切り捨てる方向でまとめるのは(心理的/社会的にはともかく)楽だ。だが、それでは重大な欠陥を持つ製品となってしまう。そしてマクロ的には「購買層の見落とし」として現れる。かといって、多数決で決めて行ったらどうなるか。ある分野の代表者と言っても、多分野では素人。なので、どうにも魅力の無い仕様ができあがる。

 だからこそ、専門職としてのデザイナーが必要になる。そしてデザイナーという仕事は、専門職として扱われるのにふさわしいだけの困難さを持っているわけだ。