ゲームは究極の科学なり

フルタイムの教員モードに入っている企画系ゲーム屋があれこれ綴ります

堂々と説くゲームデザイン(3)

 ゲームデザイナーに求められる能力というのは、時代ごとに変わっていっている。

 80年代のゲームデザイナーには、「自分でプログラムが書けること」が必要だった。というのも、ゲーム自体が生まれたばかりのその時代には、まだ職種ごとの役割分担なんてものがなかったからだ。構想したゲームは、自分で作らないことには世に出ることがなかったのだ。

 これが90年代になると違ってくる。「豊かな創造性」と「リーダーシップ」、この2つだ。ゲームが産業として一応確立していた一方で、ゲーム性そのものは“斬新さ”が求められていた時代。すでに一人で何でもやっていくシステムは廃れ、異なるスキルの持ち主を集めた数人のチームで制作するスタイルが主流になっていた。クリエイターという人種はけっこう癖が強いわけで、そういう人間を束ねて、しかも全く新しいゲーム性を持つ作品の制作において、ゴールまで率いていく力が必要だったのだ。

 しかし大きく変わったのは、その次だ。ゼロ年代では、ゲームデザイナーには何よりも「管理能力」と「調整能力」が求められるようになったのだ。90年代、チームといっても所詮は1つのパーテーションに収まる程度の人数だった。しかし、ゲームのビジネス規模がいっきに拡大したゼロ年代では、トータルで数十人もの人間が一本のゲームに関わることになる。こうなると、全員が暗黙知を共有する同業者だけというわけにはいかない。しっかりと計画を立て実行し、限られた期間内に製品を完成させるだけの管理能力が何より必要になってくる。またステークホルダー(利害関係者)の種類も、どんどん広がっていくわけで、開発畑や社内の広報営業だけでなく、ファイナンス(資金調達)やマーチャンダイジング(商品化)など、かなり異質のカルチャーに属する連中とも渡り合う必要が出てくる。